『空中そうめん流し』

やましん(テンパー)

『空中そうめん流し』 《前編》・・・・・

 *このお話は、フィクションです。


 *《全3篇》になる予定です。


 

   ************ 🌞 🗻 🌙 ********** 



 まったく、こう暑いと、溶けてしまいます。


 ぼくは、思いきって、最近話題の『空中そうめん流し』に行くことにしました。


 天気は、良すぎるくらいに良い!


 『家庭用情報掲示板』で調べてみると、一か月先くらいまで、予約がびっちりでしたが、なんと、一瞬出たキャンセルの穴に、すぱっとハマったのです。


 あまりに急だったので、対応できた人が他にいなかったようです。


 今日の夕方7時からです。


 『ごーるでん・たいむ』ですよ!


 今は、暑い最中なので、夕方からが人気なのです。


 食べ物もそうですが、実は《夜景》も最高なんだそうです。


 お値段も最高です。

 

 空中重力浮揚装置で、地上1000メートルまで上がり、そこで、そうめん流しをするのです。


 それだけなのです。



     🚙。。。。。。。   


 

 中古の、ぼろぼろ『空中カー』で、ぼくは、駐車場まで行きました。 


 最初、思いついた時に、心配したほどには、駐車場は混雑していません。


 家族づれが、意外と多いからなんでしょうか。


 あの、名高い『タボリ公園』のゲートみたいな、洒落た受付で予約データを示し、チケットを体のチップに入力してもらいます。


 料金は、自動引き落としです。


 2回払いで、お願いしました。


 もっとも、これは『基本料金』です。


 『そうめんながし』がウリですが、それ以外のメニューもたくさんあります。


 『そうめん』以外の、飲み物や、食べ物には、別途料金が、かかるんだそうです。


 また、帰りがけには、『お土産コーナー』があって、さまざまな『お土産品』が売られているんだそうですが、それは、後のお楽しみです。


 事前の情報では、『家庭用空中そうめん流しセット』が人気だとか。


 

     🎡        🎡


 まず、一階にある、『レクチャーコーナー』で、いくつかの『注意事項』などの説明がありました。


 まあ、『ルール違反』は、しないでくださいね、という、ことです。


 さて、それから、ビルの三階くらいにある、『プラットホーム』で待つと、指定の座席がやって来ます。


 ぼくは、残念ながら、お一人様席です。


 座席に座ると、重力ベルトが自動で掛かります。


 万が一、座席がひっくり返しになっても、落ちません……の、はずです。


 乗り込むと、ゆるゆると走り始め、しばらくは、その高さで遊覧飛行しています。


 まだ、高い場所ではないですが、それでも、なんだか楽しいです。


 大きな弧を描いて、回転しています。



 お客様が全員乗り込むのを待って、華やかな音楽が、鳴り始めるのです。


『プワン・プワン・パカパ~~~!! 本日は、ようこそ、この『空中そうめんながし』においでくださいましたあ。ぼくは、『空中そ~めんくん』です!よろしくね。』


 まったく、そのまんまのお名前ですが、このキャラクターは、最近人気です。


 空中に漂う『そうめん』を、右手に持った大きな『しゃもじ』で、キャッチしている少年の姿なのですが、これが、たいへんに、可愛いのです。


 実のところ、この『しゃもじ』が、大きな意味をもつのだと、広告にも載っておりますし、さきほどの解説でも、空中に流された『そうめん』を、この『しゃもじ』でもって、さっとすくい上げて、いただくのだそうであります。


 そんなこと、できるのかしら?


『さあ、これから、空中1000メートルまで上がるよ。重力コントロールされているから、心配いりません。事前説明でもあったとおり、万が一、何かの異常な力が加わって、カートから落ちたとしても、地上には絶対に落ちません。すぐ、重力ネットに支えられます。それから、担当者が、すぐにもとのカートに戻します。念のため、料金には、万が一のための保険料金も含まれています。さあさあ、上がり始めましたあ!』


 まったく、なんの力が加わる感覚もなく、すんなりと、カートは上昇してゆきます。


 いや、これは、なかなか、すごい!


 周りを見れば、ぼくのような、『おひとり様用カート』もあれば、『家族用』の大きなものも、『恋人用』の、ハート形をした、ちょっとおしゃれなデザインのカートもあります。


 もちろん、お金を払えば、『恋人用』に、ひとりで乗ってもいいのですが、恥ずかしくて、できないでしょうね。


 高度が上がるにつれ、高いビルも追い越して、周囲が遠くまで見渡せるようになります。


 あたりは、少しずつ夕闇が迫ってきています。


 太陽が、沈み、はるかな夕焼けが見えます。


 遠くの山々が、見え始めました。


 20年前に、再び大噴火をして、形がかなり崩れた富士山も、ちいさく、見えてきました。


 まだ、噴煙が上がっています。


 海上にも、噴煙が上がっている場所が、二か所ほどあります。


 海底噴火している、新しい火山です。


 このところ、100年くらい、列島はあちこち大揺れでした。


 経済も社会も、自然も、大揺れでした。


 まあ、それでも、こうやって、まだ、遊んでいられるので、良しとしなければ。


 ぼくの寿命も、もう、そう長くはないはずです。


 だって、もうすぐ、80歳ですからね。


 もっとも、今の平均寿命は、災害死亡者などを除くと、100歳近くになっています。


 見た目だけは、60歳くらいのまま、なのです。


 そんな、そうとう、おセンチな気分になっている間に、カートたちの大きな輪は、目的地に到着いたしました。



 ************   ************


                              中編に続く








  






 




 












 


 






 


 




 






 



 


 

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