『空中そうめん流し』
やましん(テンパー)
『空中そうめん流し』 《前編》・・・・・
*このお話は、フィクションです。
*《全3篇》になる予定です。
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まったく、こう暑いと、溶けてしまいます。
ぼくは、思いきって、最近話題の『空中そうめん流し』に行くことにしました。
天気は、良すぎるくらいに良い!
『家庭用情報掲示板』で調べてみると、一か月先くらいまで、予約がびっちりでしたが、なんと、一瞬出たキャンセルの穴に、すぱっとハマったのです。
あまりに急だったので、対応できた人が他にいなかったようです。
今日の夕方7時からです。
『ごーるでん・たいむ』ですよ!
今は、暑い最中なので、夕方からが人気なのです。
食べ物もそうですが、実は《夜景》も最高なんだそうです。
お値段も最高です。
空中重力浮揚装置で、地上1000メートルまで上がり、そこで、そうめん流しをするのです。
それだけなのです。
🚙。。。。。。。
中古の、ぼろぼろ『空中カー』で、ぼくは、駐車場まで行きました。
最初、思いついた時に、心配したほどには、駐車場は混雑していません。
家族づれが、意外と多いからなんでしょうか。
あの、名高い『タボリ公園』のゲートみたいな、洒落た受付で予約データを示し、チケットを体のチップに入力してもらいます。
料金は、自動引き落としです。
2回払いで、お願いしました。
もっとも、これは『基本料金』です。
『そうめんながし』がウリですが、それ以外のメニューもたくさんあります。
『そうめん』以外の、飲み物や、食べ物には、別途料金が、かかるんだそうです。
また、帰りがけには、『お土産コーナー』があって、さまざまな『お土産品』が売られているんだそうですが、それは、後のお楽しみです。
事前の情報では、『家庭用空中そうめん流しセット』が人気だとか。
🎡 🎡
まず、一階にある、『レクチャーコーナー』で、いくつかの『注意事項』などの説明がありました。
まあ、『ルール違反』は、しないでくださいね、という、ことです。
さて、それから、ビルの三階くらいにある、『プラットホーム』で待つと、指定の座席がやって来ます。
ぼくは、残念ながら、お一人様席です。
座席に座ると、重力ベルトが自動で掛かります。
万が一、座席がひっくり返しになっても、落ちません……の、はずです。
乗り込むと、ゆるゆると走り始め、しばらくは、その高さで遊覧飛行しています。
まだ、高い場所ではないですが、それでも、なんだか楽しいです。
大きな弧を描いて、回転しています。
お客様が全員乗り込むのを待って、華やかな音楽が、鳴り始めるのです。
『プワン・プワン・パカパ~~~!! 本日は、ようこそ、この『空中そうめんながし』においでくださいましたあ。ぼくは、『空中そ~めんくん』です!よろしくね。』
まったく、そのまんまのお名前ですが、このキャラクターは、最近人気です。
空中に漂う『そうめん』を、右手に持った大きな『しゃもじ』で、キャッチしている少年の姿なのですが、これが、たいへんに、可愛いのです。
実のところ、この『しゃもじ』が、大きな意味をもつのだと、広告にも載っておりますし、さきほどの解説でも、空中に流された『そうめん』を、この『しゃもじ』でもって、さっとすくい上げて、いただくのだそうであります。
そんなこと、できるのかしら?
『さあ、これから、空中1000メートルまで上がるよ。重力コントロールされているから、心配いりません。事前説明でもあったとおり、万が一、何かの異常な力が加わって、カートから落ちたとしても、地上には絶対に落ちません。すぐ、重力ネットに支えられます。それから、担当者が、すぐにもとのカートに戻します。念のため、料金には、万が一のための保険料金も含まれています。さあさあ、上がり始めましたあ!』
まったく、なんの力が加わる感覚もなく、すんなりと、カートは上昇してゆきます。
いや、これは、なかなか、すごい!
周りを見れば、ぼくのような、『おひとり様用カート』もあれば、『家族用』の大きなものも、『恋人用』の、ハート形をした、ちょっとおしゃれなデザインのカートもあります。
もちろん、お金を払えば、『恋人用』に、ひとりで乗ってもいいのですが、恥ずかしくて、できないでしょうね。
高度が上がるにつれ、高いビルも追い越して、周囲が遠くまで見渡せるようになります。
あたりは、少しずつ夕闇が迫ってきています。
太陽が、沈み、はるかな夕焼けが見えます。
遠くの山々が、見え始めました。
20年前に、再び大噴火をして、形がかなり崩れた富士山も、ちいさく、見えてきました。
まだ、噴煙が上がっています。
海上にも、噴煙が上がっている場所が、二か所ほどあります。
海底噴火している、新しい火山です。
このところ、100年くらい、列島はあちこち大揺れでした。
経済も社会も、自然も、大揺れでした。
まあ、それでも、こうやって、まだ、遊んでいられるので、良しとしなければ。
ぼくの寿命も、もう、そう長くはないはずです。
だって、もうすぐ、80歳ですからね。
もっとも、今の平均寿命は、災害死亡者などを除くと、100歳近くになっています。
見た目だけは、60歳くらいのまま、なのです。
そんな、そうとう、おセンチな気分になっている間に、カートたちの大きな輪は、目的地に到着いたしました。
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中編に続く
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