第2話「出会い」
「このエルフのヒロインが女神なんだよなー」
俺は寝っ転がりながら、ハーレム陰キャの初刊を見ていた。パッとしない主人公が異世界に転生して突然モテだすという王道のストーリーなのだが、キャラが魅力的なのだ。
ハーフエルフのプリシラ。サキュバスのヘレナ。しがない冒険者を支える彼女たちの優しさは現実に疲れた僕を確実に癒してくれる。
しかし、この作品が話題になっているのは彼女たちの細かい描写とそれから、ハイレベルな(ほとんどのラノベには見たことのない)情景描写だと思う。こういった文章は俺には書けそうになかった。
きっと印税とか作者はたくさん貰っているんだろうな。1巻で20万部そして異例のアニメ化数千万の印税が入る。羨ましい。俺もラノベ作家になって一儲けしたい。
明日は出版社との打ち合わせと原稿を見せるために編集者と会う。残りを仕上げないと。
「君の作品は流行を追いすぎていて個性がないのよね。」
担当編集のレイコさんがため息交じりに言う。僕は作家の卵(20)の佐藤だ。入賞して二年間担当編集のレイコさんと二人三脚でやってきたが未だに芽が出ていない。
「そろそろ結果を出してくれないと。」
「はい、頑張ります。」
僕は異世界転生もののラノベを書いていたが、デビューには至っていなかった。実のところ僕も焦っていた。
「君には新しい刺激が必要かもしれない。ねえ、他の作家と会ってみる気はない?」
そう言うとレイコ(25)はタバコに火をつけた。ここは禁煙だ。
「他の作家ですか?それで何か変わるんですか?」
「きっと君に足りないものを持っているラノベ作家よ。ところで、異世界ハーレムに影キャラの俺がってラノベは読んだ?」
異世界ハーレムに陰キャの俺。通称ハーレムインキャは売上20万部を突破しアニメが決まった人気作だ。勿論俺も読んだし大ファンだ。
「読みました。面白い作品でした。」
「その作者にあって書くのを手伝ってほしいの。」
僕が?なんで?
「今すぐ答えをだして、やるのやらないの?」
「もちろんやりたいです。」
売れっ子とお近づきになるなんて、そうそうないチャンスだ。俺は快諾した。
「じゃあついてきて。」
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