第4話 壊れた一方で

 ホームルーム中だと言うのに会話が途切れることのない教室。

 そこでは大江田が教卓の前で生徒の出席を確認している。伊藤は一方的に佐々木に話しかけているが、その佐々木は彼女を無視して読書に没頭している。その二つ後方に座る片岡は、親友の成瀬の席を心配そうに見つめる。そして成瀬が休んでいる理由を知る安田は、真剣な面持ちで正面を見ている。

「成瀬―。成瀬はいるかー? うーん。今日も休みかー。

心配だから今日にでも様子を見に行って来るか」

 言った大江田に、伊藤が反応を示す。

「せんせー。ウチが一週間休んだ時は一回も来てくれなかったのにどうして成瀬の時は三

日で行くんですか―?」

「伊藤。お前は心配しなくても良い存在だから先生は心配せずにいられて嬉しいぞ」

「それ、ウチがいらない子だからですか!」

 隣で叫ぶ伊藤を、佐々木は読書を止め、驚きの表情で見る。

「シズちゃん、あなた……!」

「望もウチの驚き、分かってくれたか」

「私もかなり驚いているわ。

まさかシズちゃんが先生の遠回しな言い方を理解できるなんて」

「それどーゆー意味だよ!」

 平手で机をたたき文句を言う伊藤。

 それに佐々木は不思議な表情で、

「え、バカにしているのだけれど、これはわからないの?」

「わかってたよ! わかっててどうしてそんなことを言うのか聞いてるんだよ!」

「あー。伊藤。そんなことはどうでも良いから話を進めていいか?」

「せんせー! ウチへの扱いがかなりぞんざいで悲しいです!」

 叫びながらも伊藤は大人しく席に座る。

「えー。後の皆はちゃんといるな。安田もいるし」

「アタシを最低限の目安に使うな」

「はっはっは。すまないすまない。とりあえず成瀬については僕が責任を持って連れて来るから皆は心配しない様に。それじゃー、授業、頑張れよ」

 日誌等を持ち、大江田は教室から出て行く。

かわりとでも言う様に江原が教室の前に現れる。だが中には入らず、教室を覗き込むようにしている。それを安田は視界の端で捉えた。

 安田は席を立ち、江原の元へ。

 江原に近づくと安田は、

「ここじゃなんだし場所を変えよう。ついてきな」

 言われた言葉に江原は頷き、歩き出す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る