第4話 ナンバー2ティファニア(187)の一日
わっちは、どの亜人よりも人間よりも優れたエルフでありんす。
朝は遅く、日が昇り、皆が仕事をしている時間に目を覚ます。
住まいは帝都の元貴族の屋敷。
「お嬢様おはようございます。コーヒーをお持ちいたしますか?」
「ミルクと砂糖じゃ。」
昨日も沢山の酒を飲んで、若干の二日酔い。
メイドが豆からコーヒーを作る間、わっちは自分の顔を鏡に映し髪の手入れをする。
エルフは見た目が命。
高級な櫛で毛先の先まで揃うように手入れする。
鏡には百年以上変わらない私の顔が映っている。
エルフの長細い美しい耳。手入れの行き届いた長い金髪。宝石のようにすんだ、ブルーの瞳。肌にも曇りがなく若々しい百歳を超えているとは思えぬ。
「うむ、完璧じゃ」
この一連の動作を今まで欠かしたことはない。
「お待たせいたしました。」
「ご苦労様。」
わっちはコーヒーとトーストを受け取り。
コーヒーを口に含む。この苦みが、わっちの、まどろんだ頭をスッキリさせてくれる。
初めて飲んだ時は、あまりの苦さに驚いたが、今ではコーヒーは私の好物の一つだ。
そして、ここからはウンザリする作業の始まりだ。キャバクラ支給のスマホから昨日の客にラインを送らないといけない。
わっちが何で下等な人間なんかに……。
とは思いつつも仕事は仕事。
もう一口コーヒーを口に含み昨日の客にラインじゃ。
「昨日は一緒に食事を食べて、楽しかった♡また行きたいでありんす。」
あのデブ、きたない手で、わっちの耳に触りおって。
「いつでも、主様に会いたいでありんす♡」
指名客にも、この内容をコピーしてラインする。
この作業は簡単だけど精神が一番消耗する気がするの…。
最後の一人にメールを送り、もう一休みじゃ……。
一四時に目が覚める。
わっちがエルフの森を追われて一〇年になるの…年がたつのは早いものじゃ。
わっちは、以前旅の商人と恋に落ちてしまった。
森でけがをしたところを助けられた。
商人は自分の商っていた薬でわっちを介抱してくれた。そんな彼に惚れて、人間との禁をおかしてしまう。
わっちは商人と共に旅をするが、途中、宿にわっちを置いて彼は逃げてしまった。
他に女ができたか、既に女がいたのかもしれんの。
所詮、人間なんてそんなものよ。
あっちの雌の尻を追いかけ、こっちの雌にもついていき。
盛りのついた犬のようにフラフラしよる。
仕事に困ったわっちは帝都でキャバクラエデンで働くことにした。
村から追い出されたとはいえ、わっちは誇り高きエルフの種族。言葉もただの日本語ではなく高級娼婦をイメージした花魁言葉を学習した。
花魁言葉を話せるキャバ嬢はいないため、わっちの顔は客にすぐに覚えてもらえた。
わっちは、帝都線に乗り込み日本の新宿に向かう。
ホールを抜けると、帝都にはありえないような高いビル群がそびえたつ。
東京は人が多い。来たばかりの頃は毎日祭りではないかと思ったほどじゃ。
今日は東口で会社員と待ち合わせじゃ。
「ティファニアちゃん会えてうれしいよ。」
「わっちもうれしいでありんす。」
人間の男は本当に単純じゃの……。
胸元の空いた服でねだれば大抵のものは買わせることが出来る。
確か、最近新しいテレビが出たような。
「じゃあティファニアちゃん。食事行こうか。」
「その前に家電をみてもいいかや?」
「ああショッピングを先にする?いいよ、いいよ。」
私はテレビ売り場に行き、4kの36型テレビを見て回る。
すると、男の側が言うはずじゃ。
「どれが欲しいの?好きなのを買ってあげるよ。」
「わっちは、これが見たいでありんす。」
36型の日本製。一番高価なテレビじゃ。この男のだったら、買えない金額ではあるまい?
「うーんこれより、あっちのほうが……。」
「主様よわっちは、これで主様とテレビが見たいでありんす。」
わっちの家に行けることを仄めかしながら、男の瞳を見つめる。
「店員さん。このテレビで。」
「お買い上げありがとうございます。」
わっちは、彼の腕にしがみつき、それとなしに胸を腕に当てる。
男の顔は完全に緩み切っておる。
わっちにかかれば人間のおとこなんて、こんなもんじゃ。
わっちらは、近くのイタリアンでパスタを楽しみ。
それから、王都線に乗り込みキャバクラエデンに同伴で向かう。
夜はまだまだ、これからじゃ。
主様には、もっとお金を使って楽しんでもらわないといけないでありんす。
わっちと男は王都プラザにあるエデンに一緒に入っていく。
これが、私(137)の日常。
夜は始まったばかり、。
「弄んだあと打ち捨てる。」
キャバクラとは、そういうゲームでありんす。
異世界キャバクラ・エデン サキュバスに外れなし⁉ だびで @kusuhra830
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