第3話 君と、僕の関係
他者と接することは人間として生きていく上で必要不可欠な行動だ。
通常はこの地へ生まれた時点で親という他者が側にいる。
そして、生き抜く上で必要な基礎知識を無意識のうちに教わる。
恐らく人類が誕生してからずっとこうして歴史を紡いできたのだが、アンダーグラウンドにいる訓練生は違う。
孤児だ。
生まれてからずっと横に親がいた訳ではない。
各地の孤児院から少しずつここへ連れてこられた「ひとりぼっち」なのだ。
幸か不幸か、その孤独感が感覚リンク実験での有用性を認められ、適性検査にてリンクする相手が決定された。
豪徳寺は幼い頃に梅ヶ谷とのリンクを済ませていて、感覚リンクを使いこなす訓練に明け暮れた。
しかし、成績は芳しくない日々が続き、頑なに心を開こうとしない梅ヶ谷に苛立ちを感じていた。
ここ最近はその苛立ちを通り越して無関心を決め込んでいた。
でも、ずっとこの状況を続けるわけにはいかない。豪徳寺には雑用係など耐えられないし、感覚リンクで成果を上げ研究者達に恩を返したい。
その気持ちが先行してしまい、梅ヶ谷と向き合う機会すら、自分から放棄してしまったのだ。
まずは昂る気持ちを抑え込み、背中を丸めながら歩く梅ヶ谷の方へ踵を返す。
「なぁ、なんで俺に対して何も言わないんだ?昔はここまで黙りこくってはいなかったはずだろ」
苦し紛れに出ている言葉なのは豪徳寺自身が分かっていたが、もう直接気持ちを伝えるしかない。
梅ヶ谷が、いつもより幾分か大きく口を開くと、胸を穿つかのような一言が返ってきた。
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