第5話『墜落~醜いアヒルの子とアイドルと~』
麗香は、小学校6年の夏休み明けに転校してきた。
地元のローカル番組に出ているという情報が知れ渡りすぐに人気者になった。
僕も番組を観てみたが、大人に混じって数人のローティーンタレントと街ロケや歌やダンスを披露していた。
子供ながら大人と接しているからだろうか、周りと比べ妙に言動や振る舞いが大人びている。
僕は特に近づくこともなく遠巻きにそれを見ていた。
秋、演劇発表会で麗香は主役を演じることになった。
オーディションで他を圧倒する演技力に驚かされた。
たちまちクラスのカーストの頂点に上り詰めた。
ー
「閣下、俺、やっちゃいました...」
「何がですか?」
「美里さんと勢いでヤっちゃいました。」
聞くと仕事後の帰り道、ムラムラした衝動に負け人気のない林道で無理やり襲ってしまったという。
口止めとしてその行為を動画に撮影し脅しているとも言った。
それを聞かされた僕はどうすればいいのか。
どうしろというのか。
一ノ瀬さんはその行為の動画を観てほしいと言ってきたが断った。
興味はあったが、面倒なことに関わりたくない思いが強い。
性犯罪者に加担したとも思われかねない。
この頃から歯車が少しずつズレ始めていた。
ー
美里さんはあの後も変わりないように僕の目には映った。
一ノ瀬さんともこれまで通り接している。
一ノ瀬さんからは、あれから何度も美里さんと行為に及び性奴隷と化していることを何も悪びれることもなく飄々と聞かされる。
美里さんは精神的に完全に支配されている。
初めて一ノ瀬さんから聞かされた時点で警察に通報するなりすればよかったのだろうが、僕も酷い人間だ。
どうでもよかった。他人がどうなろうが。事なかれ主義だ。
後に僕もこの台風の渦に巻き込まれるとは、この時はまだ思いもしなかった。
ー
「虹の彼方、レインボー麗香です!」
「麗ンボー、いいキャラしてるねー。」
あれは、いつだったろう。
たまたま点けた深夜テレビで数年振りに麗香の姿を観ることになった。
テレビ番組の企画でアイドルグループのメンバーとしてデビューしていた。
すぐにググる。
芸能事務所の所属タレントに本名で名前が載っている。
Wikipediaまである。
上京して本当にアイドルになったんだなぁ。
何だか感慨深い。売れないアイドルだとしても自分の身近にいた人が華やかな世界に身を置いている事実が。
麗香とは話した記憶も殆どない。
その番組で際どい水着で芸人とワイワイゲームをしたり、セクハラ的ないじりをされていた。
それを見て不覚にも抜いてしまった...
(何をやっているんだ.....)
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