第4話 『片鱗~覗かせた本性~』
「吐きそうで、吐いたらマズいので早退しますわ。」
一ノ瀬さんは、帰っていった。
2時間遅刻して出勤し、2時間早く退勤する。
(重役出勤...)
(麻雀寄ってくんだろうか)
一ノ瀬さんは、前日、仕事後に麻雀店に行っている。
昨日の帰り道、「麻雀一戦してきますわ。」
「また行くんですか?連日行ってますね。」
「仕方ないんや。今、13連勝中で△○□×」
頭に入ってこない。要は、勝ち続けているので行かないとダメらしい。
(ホントに堕落してる。仕事そっちのけで、麻雀中心の生活。遅刻、早退、当日欠勤は日常茶飯事。本人はどう考えているんだろう。)
一ノ瀬さんは地元の高校を卒業後、首都圏の大学受験に失敗し浪人している。
浪人時代、予備校には当初通っていたが家ではろくに勉強せず麻雀に明け暮れていた武勇伝を聞かされている。
結果、現役時と同じ大学しか合格せず、唯一合格した大学に不本意ながら通うことになった。
東京の大学を卒業後、暫くは東京で生活をしていたが、わけがあり実家に戻っている。
ー
「閣下、麻雀でプロ野球のチケットペア貰ったんやけど行きまへんか?
俺、興味ないんや。」
「僕、行く人いないんで。
一緒に行きませんか?」
「俺、興味ない言うてるやろ。
母親とどうや?」
(今更、いい歳した男が母親と仲良く野球観戦...ないわ。)
風が吹いている。空高く青空が広がる。心地よい。
程よい陽射しが気持ちよい。このまま逃げ出したい気持ちになるもグッと堪える。
それは、当然だ。
ー
スーパーで割引の弁当を買い、ワンルームの自宅の電気を点ける。
カーテンを閉める手を止め、窓の外をチラッと覗き見ると仲睦まじい親子らしき3人が手を繋ぎ歌いながら歩いている。
そっとカーテンを閉めた。
着替え、テレビをつける。録画したニュース番組を横目に弁当を食べる。
(ここの天ぷらはイマイチだな。)
録画を観終えると、おもむろにInstagramのタイムラインを追う。
ふと、スクロールしていた手を止める。
『麗香、おめでとう~!ようやく掴んだ春だね、末永くお幸せに!!』
結婚したんだ。
画面には、シンガポールに住んでいるとのプロフィールと華やかなキラキラした写真が並んでいる。
夫は、......タイムラインを遡ると当初は夫の顔はスタンプで隠されていたが最新の写真にはバッチリと写されていた。
(おっさんやん。)
この4月に婚約しシンガポール生活とのこと、語学スクールに通う様子やおすすめコスメ、週末にはゴルフやテニス、現地を観光するキラキラした写真が並んでいる。
麗香は、小・中学校の同級生だ。
小学校の頃から地元で芸能活動をし、ハキハキした利発な子だった。
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