第6話

「崩壊…」


「ヘンゼルとグレーテルはこの世界の核の一部だ。それも大きな。一人どころか、二人ともいないとなれば、世界が崩壊をし始めてもおかしくない。まあ、魔女が残っているためにこれで留っているのだろうが。先を急ぐぞ……っと」

アリスと説明を終えたマッドハッターが後ろを向くと、道を塞ぐ、黒い影の軍勢を見て、チシャ猫が固まっていた。


顔いっぱいに恐怖を浮かべたまま、強がったチシャ猫は言う。ただ声は情けなく揺れていた。

「おいおいおい、出迎えはもっと派手に?カラフルに?頼みてぇんだけど?」

「チシャ猫、人型を取れ」

「やーだね、動きに……ぶっへ?」

そっぽを向くチシャ猫にマッドハッターは自身の帽子を被せた。アリスは、チシャ猫だけ異世界に飛ばすのかと思ったが。

「動きにくいんだ……おぉ!?」

人型を取って現れたチシャ猫が無闇に腕を振り回し、影を倒すと、目を輝かせた。

「っへー!サイコーじゃん」

「チシャ猫、お前、術式はつかえるのか?」

「知らねーよ、おいらただの猫だったし〜」

自慢げに言うことかと突っ込まれたチシャ猫は、仕方ねぇな、と一度猫に戻ると、体毛を抜いた。息を吹きかければ、トランプ兵が現れる。

「さっさと使え、クソ猫」

「俺の一声でこいつら消えるけどいいかな?」

二人で影を倒す様子を、何もできず見ているアリスは心細くなった。


「アリス!」

「まじかよ!」


アリスの目の前にある地面から黒い影が沸き立つ。アリスの頭は真っ白で、沸き立つ地面を見つめることしかできなかった。

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アリスイン…… 若宮かのん @Kanon-w

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