第3話
「ようきた……」
しばらくして現れた女王は、疲れた顔をしていたが、いつもの調子で悠然とそう述べた。その彼女へ、マッドハッターが隣で一歩前に進み出た。
「グレーテル、そしてヘンゼルも被害を受けた模様」
女王は彼の言葉に目を伏せ、話を聞いた白兎は、マップへとなにやら書き込んでいる。初めて見たあのマップがなにを示しているのか、アリスはよくわからなかった。
「ヘンゼルとグレーテルがこの領地にいることがありえない。なにが起きているの」
アリスの絞り出したような声に、女王が顔を上げた。一瞬ためらうようなそぶりをしたが、淡々という。
「夢の魔女が力を集めるために起きた世界の混沌化だ」
アリスがハッとする。夢の魔女は、彼女がこの世界にいる原因の魔女だ。再び彼女の肩書きを聞くとは思っていなかった。眉間にシワがより、自分の表情が硬くなるのをアリスは感じた。
「あの女が、なにをしているの」
「実際に動いているのはその支配下にある奴らだ。どうも、夢の魔女はちからが枯渇し始めているようでな」
衰え始めた力を補うにしては、話が妙だった。魔力を持っているのは魔女や魔法使いのはず。
「なら、どうして魔女そのものを狙わないの」
「三流が我らに敵うと思うか。敵わないために、最も強く影響を受けたものを集めている」
ヘンゼルとグレーテル、魔女に打ち勝ったとは言え、まだまだ子供である。魔女も結局は抜け殻を捨て、復活したとハートの女王伝いに聞いた。魔女はそれだけ強い力を持った存在なのだろう。
また、アリスには引っかかることがある。
「強く魔女の影響を受けた……」
「そうさアリス。もっとも危険なのはお前さ。一つの領地に留まるな。奴らは最後、必ず最後にお前を求める」
アリスが震えたのを女王は見逃さなかった。ホッとしたような様子で、女王は微笑む。
「お前にも恐れがあるのか」
「見たんだもの……」
「そうか……お前もか」
そう言った後、彼女は窓の外を見る。
「気づいているだろうが、城の者も何人かやられている。かと言って調査に入らぬわけにはいかぬ」
女王の様子から、この人も目の前であれを見たのかとアリスは察した。唇を噛み締めてから、彼女は玉座を睨むように見た。
「何か私に用があるんでしょ?」
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