第3話 学校一の美少女に失恋した?
「美波じゃなかった」
「そうみたいだな」
「そうすると、蒼井優子かな」
「……」
蒼井優子。学校一の美少女。同学年はもちろん、三年生からも、一年生からも、モテモテで、他の学校の生徒からも告白するものは後を絶たない。俺も、たまにすれ違うと、無意識に目が追ってしまう。
「よし、蒼井優子に確かめてみよう」
「頑張れ」
こころなしか、翔太の目が冷たい。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
昼休み、蒼井優子に会いにE組の教室に行くと、ちょうど蒼井優子が出てくるところだった。
「蒼井さん、ちょっといいですか」
俺が声をかけると、チラッと一瞬だけ俺を見たが、そのまま歩いていこうとした。
「ちょっと待って、聞きたいことがあるんです!」
俺が追いかけると、振り向いて
「あなた誰?」
と聞いてきた。
「C組の山本だけど」
「この学校の人?」
「この学校の人って、制服見ればわかるでしょ」
「制服なんか、どこでも買えるでしょう。他の学校の人が忍び込んでるかもしれないじゃない」
なるほど。言われてみれば、そうかもしれない。
「って、そんなわけないだろう! 何度もすれ違っているじゃないか!」
「すれ違った人間なんか、いちいち覚えてないわよ」
そう言って、立ち去ろうとした。
な、なんなんだ、こいつは!
いくら、美人だからって、高飛車すぎるだろう!
俺は、本当に、こいつに振られたのか!?
「ちょっと待って! どうしても、聞きたいことがあるんだ」
俺は慌てて追いかけた。
「昨日、俺、君に振られたかな?」
俺がそう言うと、蒼井優子が俺の顔を、無表情な顔でじっと見た。
不審がられている! そりゃ、そうだ。普通、こんな事聞かれたら、一体何のことだと思うだろう。
「俺、実は、昨日の記憶が……」
「ごめん、ちょっとわからないわ」
慌てて言い訳をしようとしたら、予想外の答えが返ってきた。
「わからない? 君も昨日の記憶がないの?」
「昨日の記憶? 何言ってるの、あるに決まっているじゃない。私、記憶力はいい方なの」
???。
記憶力がいいのに、昨日、俺を振ったかどうかわからない?
いったい、どういう意味だ?
「ちょっと、意味がわからないんだけど。記憶力がいいんなら、俺を振ったか覚えてるんじゃ?」
「昨日でしょ? 昨日は、ちょっと特異日だったから」
「特異日?」
思わず、心の声が出た。
「私って、けっこうモテるじゃない?」
「はぁ」
自分で言いますか。
「だいたい、普段から、一日に5人に告白されるのよ」
一日に5人! 確かにモテる。
「でも、一年に一回、異常にモテる日があるの」
えっ? なに、この設定?
「昨日は、その特異日で、500人に告白されたのよ」
「ご、ごひゃくにん!!」
思わず、声がひっくり返った。
「男子生徒全部合わせても、500人もいないけど」
「当然、女子からも告白されてるわよ」
「当然?」
「もちろん、生徒だけじゃなく、先生からもね」
「まじで!!」
「とにかく断るだけで精一杯だったから、相手のことをいちいち確認している余裕はなかったの。だから、君に告白されたか、ちょっと覚えてないな」
「……」
もう、言葉が出ない。
「でも、さっきも言ったけど、記憶力はいい方なの。500人に告白されたのは確か。499人でもなく、501人でもない、ちょうど500人。だから、私に告白した500人を特定できれば、君が私に告白したかわかるんじゃないかな」
えっ? 蒼井優子に告白した500人を調べる?
「ちなみに全員振ったから」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺は午後の授業をサボって、蒼井優子に告白した人間を片っ端から調べた。
1年:150人
2年:143人
3年:185人
教師:20人
用務員さん:1人
合計すると499人。もしかすると、残りの一人が俺かもしれない。
「翔太、俺、蒼井優子に振られたかもしれない」
「……」
あいかわらず翔太の目が冷たい。
「おい、翔太。聞いてる?」
「……」
「おいってば。俺が振られたのって、蒼井優子かもって言ってんだけど」
「蒼井優子の名前出すなー!」
「えっ?」
「せっかく、忘れようとしてんのにー!」
「もしかして……」
「……」
「念の為聞くけど、お前、昨日、蒼井優子に告白した?」
翔太が泣き出した。
どうやら、500人目は俺ではなかったらしい。
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