コーヒーたいむは教室で

「ペットボトル飲料って不経済なのよね……おかげですぐお小遣いが尽きちゃう」

真白さんがいつも良く飲んでいる、炭酸飲料の殻のペットボトルを見ながらそう言いました。

「アルバイトとかしてみたらどうですか?真白さんなら許可が出るでしょう」

私たちの学校では勉学に著しい影響を及ぼさないと判断された生徒に限り、許可制でアルバイトをすることが出来ます。真白さんなら成績がよいですし大丈夫でしょう。


「ちょっと昨日してみたのよ。こんなの持って繁華街いってさ」

そういって真白さんが鞄からとりだしたのは、小さな看板でした。ただ、書いていることは女子高校生が持つにはあまりにも危険なことでした。

「『1時間1000円、何でもやります!』って真白さん大丈夫だったんですか!?」

そんなの持って町をうろついてたら新手の援助交際にしか見えません。それに少し失礼ですが、真白さんは……幼児体型なので……簡単に変なことされそうです。


「仕事内容は庭の草むしりとか、おじいちゃんの将棋の相手とかだったよ~」

「いい人に雇ってもらって……良かったですね」

と言うかそれは保護されたのでは?そして真白さんは勉強以外まるで駄目なのでは?

とりあえず、そのおじいちゃんには感謝しましょう。


「と言うわけで、早速そのお金で買ってきました!インスタントコーヒー!」

「どう言う訳で買ったのか説明をお願いします」

自分の中では論理が出来ているのかもしれませんが、それを説明してもらわないとわけが分かりません。


「私がペットボトル飲料を買っている理由として、水道水が飲めないってのがあるのよね」

確かに水道水のカルキ臭さが苦手と言う人はいるでしょう。まあ、日本の水道水は世界で最高の安全性があるので問題なく飲めますが。


「水道管の中って、結構赤錆だらけなのよね。だからその錆が少しづつ飲んでいる水道水に混ざって、自分の体も錆に侵されていると思うと……ちょっと飲めなくなっちゃった。それに学校の水道管なんて経年劣化してるだろうし……」

「考えすぎです!それに気持ち悪いこと言わないで下さい!」

水道水もうそのまま飲めなくなっちゃったじゃないですか!

(水道管の中に発生する赤錆の正体は酸化鉄です。酸化鉄は人体には無害なため、真白さんが言っているように錆に体を侵されるなんてことはありません)


「でも、ずっとペットボトル飲料なんて買ってたらお金なんてすぐなくなる。だから学校の水道水を少しでも飲みやすくするために、インスタントコーヒーを買ってきたの」

「発想が軍隊のそれじゃないですか……」

どれだけ水道水苦手なんですか……水道水であたった人聞いたことありませんよ……


「そうなんだよね、世界各地の軍の支給品にインスタントコーヒーがあるのって、どんなに美味しくない水でもコーヒーにすれば飲みやすいからなんだよね。だから私はその知識を借りようと思ったの」

軍の人達にかなり失礼な気がします。せっかく安全な水が飲めるというのに。


「さて、早速作るとしますかね。えーとまずスプーン一杯をカップに入れて……」

「真白さん、ちょっといいですか?」

真白さんは手元から目を離さずに、返事をしました。

「どうしたのー?遥ちゃん」

ずっと気になっていました。コーヒーをいれる上で必要なものをどうやって学校で手に入れるのか。


「お湯は……どうするんですか?」

「あっ……」

そのまま、真白さんはフリーズしてしまいました。

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