今までの罪を教会で懺悔
「遥ちゃん遥ちゃん」
真白さんがまた授業中なのに話しかけてきました。この人は話す内容が尽きないのでしょうか?ともかく無視してノートをとるとしましょう。
「私昨日、教会で懺悔してきたの」
「……ちょっとその話詳しくお願いします」
いや、無視しようとはしたんです。だけれどいつもの彼女の話とは違って、不覚にも気になる言葉が飛び出したので今回は聞こうと思っただけです。
「最近ね、嫌なことが続くのよ。ラーメン屋でチャーシュー麺たのんでもチャーシューが四枚しか入ってなかったり、天むすには海老が一本しか入ってなかったり……」
「妥当です」
この人、ひょっとして頭そんなに良くないんじゃないんでしょうか?
「だから、こんなことになってるのは今までの私が悪いことを一杯したからなんじゃないかって。だから罪を懺悔しようと思って教会に昨日行ってきたの」
真白さんの相手する神父さん、ご苦労をお察しします。
それで教会に入るって懺悔をしたいって伝えると、映画で見るような個室に通されたの。薄い壁一枚隔ててその向こう側に神父さんがいるの。
結構若い、意外と私達と同じぐらいの年かな?そんな感じの声が私にこう聞いてきたの。
「どうなさいましたか?」
ってね。それで私はこう答えたの。
「今まで……私の犯した罪を聞いてくれないでしょうか?」
そういうと神父さんは優しい声で、
「ここは懺悔室です。あなたが話したいことを話せばいいんですよ」
そう聞いた私はまず、小学校時代の罪を話し始めたの。
「私は小学校のとき、ライン引きで校庭にでっかく『SOS』って書いてどっかの飛行機、騙されねえかなみたいな遊びをしてました!」
「……はい?」
「まだあります!風が冷たい冬の季節に、コンビニで買った幕の内弁当を、証明写真を取る箱の中で食べたことがあります!」
「……えっとあなたが何をおっしゃっているのか分からないのですが?」
それから私は一呼吸おいてね、
「中学生のとき、水鉄砲を打ってきた小学生たちに、高圧洗浄機で反撃して泣かせたことがあります!」
「……ええ?」
「神社の初詣の時、親から渡された十円玉をこっそり自分の一円玉と交換して賽銭したことがあります!」
「……?」
それからね、これは言うべきかどうか悩んだんだけど……
「隣の席の子の胸元に今にもダイブして甘えそうになってしまいます!」
「…………」
「ってまあこんな感じで罪を懺悔してきたんだ♪」
「馬鹿なんじゃないんですか!?」
神父さん後半黙っちゃってるじゃないですか!そんなくだらない罪を懺悔しないで下さい!
「それでその後、『えっと……その……罪を懺悔する姿勢は……とても立派だと思います……そのように誠実に生きれば……主も救いを与えてくださるでしょう……』って神父さん言ってた」
「確実に神父さん困ってるじゃないですか!」
教会は来るものを拒まないと聞きますけど、私の隣にいる女の子は無理やり追い出してもいいと思います。
「でも……真白さんがキリスト信仰の方だったとは……意外ですね」
「ううん、仏教だよ~」
「なんで教会行ったんですか!」
「この間さ、家の手伝いで懺悔室で悩み聞いてたら、結構変なことをいってくる女の子が来たんだよね」
「どんなことを言われたんだ?」
「なんか……幕の内弁当を証明写真の箱の中で食ったとか……高圧洗浄機で子供泣かしたとか……」
「……あとでそいつ、絞っとくから安心してくれ」
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