第5話 夏景色



『校庭』


だ~れもいない セミの声だけの


田舎の小学校の教室


町に転校して行った


君の机の上に顔を横にする


かすかに声が聞こえるよ


〇〇君 げんき?


それから僕は 僕の机の


ナイフで刻んだ〇〇さんという名前を


指でなぞる。



思い出す


だ~れもいない教室と


子犬が一匹の夏休みの校庭。



『夏の夢』


思えば、この半年、夢を見ていたのかも知れない。


一つは、春の海辺で、ほっこりしている、そんな夢。


もう一つは、波の光のように、キラリとひかり、セクシー。


夏の夢は 夏が終わらないうちに去り、


浜辺には君が忘れた お気に入りの帽子があった。


君はこの帽子を取りに また 戻ってくるかも知れない。



『夏の終わりに』


夏の終わりの 砂浜に 


君が書いた 二行の言葉


それを言いに 戻って来たのかい


大事にするよ その言葉


ああ- 帽子を忘れてはいけないよ。



『夏坂』


この坂を曲がった先に


あなたと住んだアパートがありました


身ごもったあなたの


お尻を押して上ったことも


この坂は駅から近いのだけど


去年は休まず上れたが


今年は途中で休んで汗をふき


夏の終わりの雲を見上げるのです。

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