第4話 妻にささげる散文詩



つきあってくれるかい

親を通してくれますか

やんわりと断り文句?


どこのお嬢さん?

家は土建屋であった

出て来たお父さんに僕は

気に入られた


彼女は逃げられなくなった

ざまーみろと僕は ほくそ笑んだ


結婚前 デートで神社に行った

この鳥居の上に石を投げて乗ったら

「幸せになれるんだって」

僕は小石をひらって投げた 運良く乗った


次に彼女が投げた 僕の石を弾いて乗った

彼女「ワザとやったのではないよ ゴメンネ」

僕 「・・・・・・・・・」不吉な予感?


彼女は繊細で 僕がいないと

自殺するのではないかと思った

それを父に言うと

「それぐらいで丁度いいのや」と答えた

今その意味がやっと分かるようになった。


アパートの新所帯

今日も湯豆腐と蒲鉾 明日も・・。

冬は日本酒に丁度いいでしょう


夏は冷奴にトマト

ビールに丁度いいでしょう

妻は料理が苦手だった

というより 全然「あかん」のであった。


そんな彼女が料理を頑張りだした

職場に電話 「今夜何を食べたい?」

僕は残業すっぽかして急いで帰宅

出てきたのは 僕の云ったものではなかった

「だって、途中で出来なくなってしまったもん」と

新妻は泣いた・・。


昼に焼きそばを食べた

夕食は焼きそばであった


昼にカレーを食べた

夕食はカレーであった


「昼食べるようなものを夜出すな」と

僕は叱った

「あなたが昼に何を食べているかは分からない」

それから、毎日電話で報告させられた

面倒くさくなって 何でもよくなった。


妻は お酒は飲めなかった

少し飲めた方がいいと思った


喧嘩すれば女の口には勝てない

僕は手が出そうだと思うと

居酒屋へ「チョット行ってくる」

いつも途中で 妻は不満であった


後ろから つたつたと迫る足音

振り向くと 妻が僕の襟首を持って

へなへなと倒れた


一升瓶の残り酒飲み干して

坂道を駆けてきたのだ


それ以来妻は飲めるようになった

今、「ビールは一番搾りに限るわね!」


息子に娘が出来た

独居の母が寝込んだ


「あなたはお母様の介護ね」

「わたしは孫の世話を手伝ってやらなくては」

妻はそれっきりほとんど息子のところに居座った


用事があって電話した

「何か用件? 早く言ってよ」


都合が悪くなると 声高に

「そんなこと 聞いてないわよ。聞いてないったら

聞いてないの」


それでも話を続けると

電話は「ガチャン」


僕は癌になって胃を全摘した

その部位を見せられても

息子はその日 ビフテキを食らったらしい


妻は石切神社で お百度を踏んでくれた

僕のために お百度踏んでくれる人は

彼女だけなのだ 


感謝!しているよ。

今でも ・・・・・よ。


*つれなくされても、何度ささげたことか・・

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