第4話 妻にささげる散文詩
一
つきあってくれるかい
親を通してくれますか
やんわりと断り文句?
どこのお嬢さん?
家は土建屋であった
出て来たお父さんに僕は
気に入られた
彼女は逃げられなくなった
ざまーみろと僕は ほくそ笑んだ
二
結婚前 デートで神社に行った
この鳥居の上に石を投げて乗ったら
「幸せになれるんだって」
僕は小石をひらって投げた 運良く乗った
次に彼女が投げた 僕の石を弾いて乗った
彼女「ワザとやったのではないよ ゴメンネ」
僕 「・・・・・・・・・」不吉な予感?
三
彼女は繊細で 僕がいないと
自殺するのではないかと思った
それを父に言うと
「それぐらいで丁度いいのや」と答えた
今その意味がやっと分かるようになった。
四
アパートの新所帯
今日も湯豆腐と蒲鉾 明日も・・。
冬は日本酒に丁度いいでしょう
夏は冷奴にトマト
ビールに丁度いいでしょう
妻は料理が苦手だった
というより 全然「あかん」のであった。
五
そんな彼女が料理を頑張りだした
職場に電話 「今夜何を食べたい?」
僕は残業すっぽかして急いで帰宅
出てきたのは 僕の云ったものではなかった
「だって、途中で出来なくなってしまったもん」と
新妻は泣いた・・。
六
昼に焼きそばを食べた
夕食は焼きそばであった
昼にカレーを食べた
夕食はカレーであった
「昼食べるようなものを夜出すな」と
僕は叱った
「あなたが昼に何を食べているかは分からない」
それから、毎日電話で報告させられた
面倒くさくなって 何でもよくなった。
七
妻は お酒は飲めなかった
少し飲めた方がいいと思った
喧嘩すれば女の口には勝てない
僕は手が出そうだと思うと
居酒屋へ「チョット行ってくる」
いつも途中で 妻は不満であった
後ろから つたつたと迫る足音
振り向くと 妻が僕の襟首を持って
へなへなと倒れた
一升瓶の残り酒飲み干して
坂道を駆けてきたのだ
それ以来妻は飲めるようになった
今、「ビールは一番搾りに限るわね!」
八
息子に娘が出来た
独居の母が寝込んだ
「あなたはお母様の介護ね」
「わたしは孫の世話を手伝ってやらなくては」
妻はそれっきりほとんど息子のところに居座った
用事があって電話した
「何か用件? 早く言ってよ」
都合が悪くなると 声高に
「そんなこと 聞いてないわよ。聞いてないったら
聞いてないの」
それでも話を続けると
電話は「ガチャン」
九
僕は癌になって胃を全摘した
その部位を見せられても
息子はその日 ビフテキを食らったらしい
妻は石切神社で お百度を踏んでくれた
僕のために お百度踏んでくれる人は
彼女だけなのだ
十
感謝!しているよ。
今でも ・・・・・よ。
*つれなくされても、何度ささげたことか・・
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