3周年企画! 3年間想い続けた彼女。

 3月20日 

 俺、三原悠みはらゆうは中学の卒業式の後、雪穂ゆきほちゃんという女の子に学校裏の桜の木の下に呼び出されて、告白された。


「悠くんのことが、好きです。付き合ってください。」

「…ごめん、俺、他に好きな人がいるから。雪穂ちゃんとは付き合えない。」


 しかし、その時俺は他に好きな女の子がいたため、雪穂ちゃんからの告白を断ってしまった。

 当時の雪穂ちゃんは、短髪のおかっぱ頭のような髪型で身長も中学生とは思えないほど低く、積極的に話しかけることもない、あまり目立つような女の子ではなかった。


「そっか…わかった。ありがとう。」


 雪穂ちゃんは走り去るように俺の前から立ち去っていった。

 それが中学生活で見た最後の雪穂ちゃんであった。


 俺はその後、好きな女の子に告白をしたものの、断られてしまい、俺の恋は履かなく散った。



 その後、俺は高校に入学すると、なんと雪穂ちゃんと同じ高校で再開した。

 前髪を上げて、顔がはっきりと見えるようになった雪穂ちゃんは、中学の頃とは見違えるような明るい笑顔を人前で積極的に浮かべるようになり、周りからの評判もよく、男子から絶大な人気を誇った。

 小学生のような体系だった中学の頃とは違い、身長は10センチほど伸びた。まだ、他の子と比べたら低いほうではあったが、その可愛らしい凛とした立ち姿と笑顔がとても印象的だった。


 それからというもの、雪穂ちゃんが男子生徒に告白をされたという噂を何度も

 聞くようになった。

 しかし、その告白を雪穂ちゃんは

「他に好きな人がいるので…」

 と言って誰にもOKをしなかったそうだ。

 いつしか、雪穂ちゃんを落とすのは至難の業が必要だという結論に至り、学内では高嶺の花の存在へとなっていった。


 俺は中学時代の自分を悔いた。今頃、あの時の雪穂ちゃんの告白をOKしていたら、雪穂ちゃんと幸せな高校生活を送っていたのだろうか…

 そんなことを思うようになった俺は、気が付いた時には、毎日のように雪穂ちゃんのことを考えるようになっていったのだった。


 そんな出来事がありながら、月日は流れ、高校3年の卒業式。


 3年後の3月20日


 俺は卒業式の後、雪穂ちゃんに呼び出された。

 雪穂ちゃんから俺が呼び出されたという噂がどこからか流れ、卒業式が終わったのにも関わらず、教室内はどこかざ落ち着きがない緊張感が漂っていた。

 俺は最後のHRを終えて席を立ちあがり、教室を後にする。

 クラスの奴らが全員して俺を見つめていた。


 俺は全員に見送られ緊張しながら、雪穂ちゃんに言われた通り、少しずつ咲き始めた学校裏の桜の木の下に向かった。

 そこには、髪を肩甲骨辺りまで伸ばして、髪を後ろで結び、さらに大人びた雰囲気へと変貌した雪穂ちゃんが立っていた。


「来てくれてありがとう。」


 雪穂ちゃんはニコっと微笑みながら俺を見つめていた。

 その姿は、中学時代の雪穂ちゃんとは見違えるような綺麗な美少女だった。

 俺は思わず見とれてしまう。


「今日が何の日だか知ってる?」

「え?今日?卒業式じゃないの。」


 唐突に雪穂ちゃんに質問をされ、俺が答えると、雪穂ちゃんは首を横に振った。


「違うよ…今日は悠くんに振られてから、ちょうど3周年の日」


 ニコっと微笑みながら雪穂ちゃんが言った。

 俺は丁度3年前のことを思いだした。

 そうだ、ちょうど3年前の卒業式の日、同じような桜の木の下に呼び出されて雪穂ちゃんに告白され、俺はその告白を断ってしまったのだった。

 そして、俺は今3年の時を経て、再び雪穂ちゃんに呼び出された。


 俺は雪穂ちゃんの方を見ると、ニコっと笑いながらも、どこか昔を懐かしんでいるような表情を浮かべていた。

 すると、真剣な表情を浮かべ、何か覚悟を決めたような顔になった。


「でも、もう4周年目はないの。今日で終わりにする…」


 雪穂ちゃんはそう言うと、悲しそうな表情を浮かべながら俯いてしまった。

 俺が心配して様子を伺うと、今度は恥ずかしそうに頬を赤らめていた。


「その…ね。私、中学を卒業してから、ずっとあなたの好みのタイプに慣れるように努力してきました。まだまだ悠くんの子のみの女の子には程遠いかもしれないけど…私は頑張りました。だから、胸を張ってあなたに告白をします。」


 そう宣言をして俯いていた雪穂ちゃんは、スっと顔を上げ、俺を覗き込むようにニコっと見つめた。


「悠くんのことが好きです、付き合ってください。」


 その自身にあふれた屈託のない笑みは3年前、俺が振ってしまっても尚も諦めずに努力してきたからこその笑顔なのだろう。

 こんなにも俺のことを思い続けてきてくれた雪穂ちゃんのことを、俺は気が付いた時には、いとおしくてたまらない気持ちになっていた。

 俺は生唾を飲みこみ、息をスゥっと吐いて、意を決して言葉を発した。


「うん、ありがとう。俺も、雪穂ちゃんのことが好きだ。」


 微笑みながら、優しく、丁寧に、自分の今の気持ちを正直に雪穂ちゃんに伝えた。


「本当に?…」


 雪穂ちゃんは驚いた表情を浮かべながら目をウルウルと潤わせていた。


「あぁ。本当だよ、だから…俺と付き合ってください。」


 3年間俺のことを一筋に想い続けてくれた感謝の気持ちを込め、俺は深々と雪穂ちゃんに頭を下げて俺からも告白をした。



 頭を下げているので雪穂ちゃんの顔を伺うことはできないが、


「はい…」


 と震えたかすれ声で言った返事には、3年間俺を追い続けてくれた想いがすべて入っている、そんな一声だった。

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