お手伝いAIのリンドバーグです!お礼を言いに来ました!

「…さん」

翔平しょうへいさん…」


 誰かに呼ばれた気がしてふと目を開ける。

 目を開けた先には、水色の帽子を被り、白みがかったグレーの髪をした美少女が立っていた。


「翔平様おめでとう!ついに10個目のお題達成です!」


 その美少女は、ニコニコと笑顔を浮かべながら俺を褒め称えていた。

 なんだこのシチュエーションラブコメみたいな展開は??


「ん?どうしたのですか翔平様?紙とペンと消しゴムを持ったままポカンとして。」


 俺がポカンと彼女を見つめているのが不思議に思ったのか、彼女はキョトンと首を傾げてこちらの様子を伺って来ていた。


「えっと…誰?」


 俺は状況が全く飲みこめず、開口一番に口にした。


「えぇ!?翔平様、私のことをご存じないのですか?!」


 彼女は大きく開いた口を手で押さえながら、驚いた表情を浮かべていた。


「え、ご存じないというか…まず見たこともないんですけど…」

「そ・・・そんなぁ、カクヨムをご利用しているにも関わらず私のことを知らないなんて、私の知名度もまだまだのようですね…」


 ガッカリした様子で肩を落としていた彼女は、ふぅっとため息をつくと、顔を上げてニコっとした笑顔で俺を見つめてきた。


「翔平様!初めまして!お手伝いAIのリンドバーグです!」

「お手伝いAI?」

「はい!カクヨム内の作家のサポートや応援・支援を行うために生み出されたお手伝いAIなのです!」

「へぇ~、そんな人がカクヨムにいたんだ。俺はてっきりカクヨムにいるキャラはあの鳥だけかと思ってたよ」

「あぁ…あのフクロウみたいな面したクソ鳥ですか…そうですね、許認可申請降りてますしね、私は認めていませんが…」


 急に真顔になり毒舌なことを言い始めたんですけどこの人…AIにも関わらず、喜怒哀楽が激しい子だなぁ。

 そんなことを思いつつ、まじまじと彼女を観察していく。

 ってか公式キャラにしてはスカート短すぎないか??一応黒タイツ履いているとはいえ・・・

 俺はじぃっとその短いスカートから伸びるスラッとした黒タイツに包まれた足を眺める。


「ちょっと、翔平様!どこを見てるんですか!」


 俺の視線に気が付き、バーグさんはスカートの丈の部分を手で隠しながら恥ずかしそうに頬を染めていた。


「そんなにいやらしい目で私を見ないでください、この変態!」

「あ…わりぃ」

「スカート丈短いのはコンプレックスなんですから…」


 なんでだろう?罵倒されているのになんか全くけなされてる感じがしないぞ?

 むしろ、もっとけなしてくださいって思ってしまうのは何故だろう??


「それはそうと!おめでとうございますですよ翔平様!」


 バーグさんは手をパンと叩いて話題を戻した。


「え?何が?」

「カクヨムの3周年記念選手権のことです!ついに10日目のお題を見事書き終えましたね!翔平様なら最後までやり遂げてくれると思っていました!」

「あ、ありがとう…」


 バーグさんに褒められて俺もつい笑みがこぼれる。


「今日は私が直々に最後までやりきってくれたお礼を言いに来ました!もう一人カタリという子がいるんですが、作者様たちの作品の配達が忙しく、手が離さないようで、私が代表して参りました!」

「へぇ、そうなんだ」

「はい!私も翔平様の書いた作品、1日目からすべて読ませていただきました!特に良かったのが、6日目のお題最後の3分間の作品です!ほら!」


 手に持っていたタブレットで俺の作品をを素早く探し出して、俺が書いた作品を表示しながらこちらに見せてきた。


「翔平様!とても良く書けていますね!下手なりに!」

「ひでぇな、おい!」


 最後に天国から地獄へと落としてきやがったこのバーグとか言うAIめ…ぬか喜びじゃねーか。


「え?あれ?何で落ち込んでるんですか?なにか私可笑しなこと言いました??」

「いや、もっとこう褒めるならちゃんと褒めてほしかったなって…」


 俺がどこか遠くを見つめるような哀愁漂う目で言うと、バーグさんは手を体の前でアワアワとさせ、申し訳なさそうにこちらを見てきた。


「も…申し訳ありません!私としたことが、翔平様が悲しませるようなことを言ってしまい!訂正いたします!とても良く書けています!2番目に!」

「それはそれで十分に失礼だよ!?まあ、さっきよりはマシだからいいけどさ…」


 俺は半分バーグさんの対応に諦めて、大きなため息をついた。

 すると、バーグさんが持っていたタブレットがピコピコと点滅して通知が届いた。


「大変!私そろそろ次の作者様の元へ行かなければ!翔平様、最後まで見届けることが出来ず大変申し訳ないのですが、私は応援していますから頑張ってください!」

「え?もう行っちゃうの??もうすぐ原稿も完成するし、もう少し見て行きなよ!」

「ごめんなさい、ルールですし、スケジュールは絶対なので…では!」

「あ、ちょっと!」

「あなたにとって最高の目覚めになりますように~」

 訳の分からないことを言いながら、手をヒラヒラと振り、バーグさんは颯爽と次の作者様の元へ姿を消していってしまったのであった。


 その瞬間視界が真っ白になり、俺の思考は飲みこまれていった…



 ◇



 ふと目が覚める…俺は机の上でうつ伏せの状態で眠ってしまっていたようだ。

 俺は思い体を起き上がらせてながらしょぼしょぼした目をこすって思考を動かす。

 確か、夢でバーグさんがなんたらとか言っていたような…

 そんなことを考えながら目の前に起動したままつけっぱなしだったPCの画面を見つめる。

 すると、画面の中にはリンドバーグと書かれた名前に夢で見た女の子のイラストが描かれていた。

 俺はそれを見て、カクヨムの10日目のお題を書いている途中で寝落ちしてしまっていたことを思いだした。


「ふふっ…」


 俺はつい口角を上げて、ニヤリを笑みを浮かべてしまう。

 なんだよ…もう俺が書きたい内容はもう決まってたんじゃねーか。

 今までPCで書いていた文字をすべて削除して、俺は新たに新しいバーグさんの物語を書きはじめるのであった。


 達筆をしている途中にふとバーグさんのイラストを見ていると、画面の中から

「頑張ってください!翔平様!」

 とバーグさんの声が聞こえてきた、そんな気がしたのであった。


 そして、俺は最後の一文字を書き終えて、公開ボタンをポチっとクリックしたのであった。

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