恵みの雨音

越後屋は寝床に入っているが眠ってはいない。


用心棒二人も同じ部屋で座っている。

交代番なのか一人は眠っていた。


屋敷内の近くには他に誰も居ない。

つまり三対一。


日を改めれば天井や床下は対策され、

用心棒も増えて侵入は困難になっただろう。


しかし犬影は今夜もう一度戻ってきた。


そして雨が降ってきた。



雨が侵入者の課題全てを解決する。


部屋には行灯が二つ灯っていた。

その一つを静かに湯呑で水を掛けて消す。


明かりが一つ消えた事でもう一方の行灯を用心棒が手に取った。

消えた行灯に近寄る用心棒に桶で水を掛ける。


「賊が居るぞ!」

叫んでもすでに暗闇の中。


千里眼の犬影以外どうしようもない。

用心棒二人と越後屋は斬り殺された。



翌朝、東町奉行の北条が越後屋殺害を知った。


越後屋は散々恨みを買っていたのだから殺されて当然でもある。

問題は北条自身の横領を知る者が居るかだった。


思えば先日、江戸の御庭番も返り討ちに遭っている。

義賊はかなりの手練れ。


奉行所にとっては無視できない義賊。

このまま放置すれば責任を取るのは北条でもある。


北条は義賊討伐を上申し、大坂城代松平も江戸も協力する事で同意した。

松平もさすがに反対は出来ない。


新たな御庭番の派遣と与力同心の増員が決まった。

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