お奉行さまを見ている

東町の奉行、北条は横領している。


打ちこわしや飢饉の度にばら撒かれる松平の私財。

善良な町人はその何割かを返しに来るのだ。


しかし松平に返ったことは無く、北条のふところへ入る。



ある夜のこと


北条「越後屋、おぬしも悪よのう」


越後屋「めっそうもございません」


越後屋は打ちこわしが起きる度に、

偽の被害を装って補償を受け取っていた。


そしてその何割かを北条に返していた。



その夜、犬神神社に女が赤子を捨てに来た。


やせ細った女が鈴を鳴らす。

賽銭箱に入れる金は無いようだった。


女は越後屋の使用人の妻お菊。


お菊「神さまお許しください」

お菊は赤子を置いてふらふらと淀川へ向かった。



北条「しかし使用人の与平。奴には妻と子供もいたはずだが?」


越後屋「へい、妻のお菊は遊郭で働かせます。

赤子は捨てるように言いました」


北条「むごいのう、

何の罪もない与平を殺しておいて打ちこわし被害を訴えるとは」


越後屋「与平もお菊も、身寄りがありやせんでした。

ばれる事はありやせん」


北条「ならせめて、わしがお菊で遊んでやろう」



その夜、犬影は与作の死体に刀傷がある事を確かめていた。

越後屋には腕の立つ用心棒が居るのか。


お菊が淀川に身を投げる前にかたをつけなければ。

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