影と影の戦い
田吾作が裏切り行為をしたのはなぜか。
『権兵衛』とは名無しの権兵衛、つまり名も無き忍者の仕業と言う事。
月影はおびき出された事を自覚した。
自分を狙う者の察しもつく。
江戸幕府の腐敗は誰でも知っている事だ。
大坂城代の松平は庶民派で月影も庶民に人気が有る。
■
忍者同士の戦い。
すでに月影は捕捉されているのかもしれない。
このまま帰るのは危険。
月影の表の顔は神社の三男、引きこもりの神主である。
もう長年だれにも気にされたことは無い、忘れ去られた三男。
逃げ切るなら夜の内がいい。
行き先は、、
田吾作の家が自然だろう。
妻のお竹も心配だ。
一人娘のきくゑだけは神社に丁稚奉公させて保護してある。
月影は田吾作を斬首して誰か分からなくし、
その首を抱えて全力で逃げる。
地元城下の逃走ルートを駆使し田吾作の家へ向かった。
■
田吾作の家に着くと薄明りがついていた。
中を覗くとお竹が背を向けて横たわっているように見える。
月影「お竹」
呼んでも返事がない。
田吾作の首を捨て、中に入る。
お竹はすでに殺されていた。出血多量。
しかし臨月だったお竹の第二子の頭が見えている。
産みきる前に力尽きたか。
月影は赤子を取り上げた。
生きているのか、泣くか。
背後に人の気配がした。
風切り音が聞こえて、少し身を躱す。
赤子を抱えていたため躱しきれず背中にクナイが刺さった。
急所は外したがおそらく毒が塗ってあるだろう。
「おぎゃあ」
赤子が産声を上げた。
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