影と影の戦い

田吾作が裏切り行為をしたのはなぜか。


『権兵衛』とは名無しの権兵衛、つまり名も無き忍者の仕業と言う事。


月影はおびき出された事を自覚した。

自分を狙う者の察しもつく。

江戸幕府の腐敗は誰でも知っている事だ。


大坂城代の松平は庶民派で月影も庶民に人気が有る。



忍者同士の戦い。

すでに月影は捕捉されているのかもしれない。


このまま帰るのは危険。


月影の表の顔は神社の三男、引きこもりの神主である。

もう長年だれにも気にされたことは無い、忘れ去られた三男。


逃げ切るなら夜の内がいい。

行き先は、、

田吾作の家が自然だろう。


妻のお竹も心配だ。

一人娘のきくゑだけは神社に丁稚奉公させて保護してある。


月影は田吾作を斬首して誰か分からなくし、

その首を抱えて全力で逃げる。

地元城下の逃走ルートを駆使し田吾作の家へ向かった。



田吾作の家に着くと薄明りがついていた。

中を覗くとお竹が背を向けて横たわっているように見える。


月影「お竹」

呼んでも返事がない。


田吾作の首を捨て、中に入る。


お竹はすでに殺されていた。出血多量。

しかし臨月だったお竹の第二子の頭が見えている。

産みきる前に力尽きたか。


月影は赤子を取り上げた。

生きているのか、泣くか。


背後に人の気配がした。

風切り音が聞こえて、少し身を躱す。


赤子を抱えていたため躱しきれず背中にクナイが刺さった。

急所は外したがおそらく毒が塗ってあるだろう。


「おぎゃあ」

赤子が産声を上げた。

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