かぐや姫

赤子は生きている。

月影は囲炉裏の火を消した。


屋内の月影は暗闇に、屋外の追手は月明かりに照らされる。


毒のクナイは確実に月影の命を奪うのだろう。

確信したのか刺客は逃げたようだ。


生まれたての赤子は一晩ともたない。

毒を受けた月影も。


一刻も早く逃げなければならない。

追手が見ていてもいい場所に。


屋外に出た月影はあえて自宅、神社に向かった。



神社の境内に赤子を置き、鈴を鳴らす。

月影はそこで息絶えた。


きくゑが鈴の音に気付いて境内に現れると、赤子と月影を見つけた。

月影の背中にはあえて抜かなかったクナイが刺さっている。


追手に付けられたまま神社で死んだ。


きくゑは14歳。

天賦の才ですでに忍者の修行を終えている。


きくゑは月影の息が無い事を確認し背中のクナイを抜いた。

赤子の息も確認する。

赤子の手には月影の遺書が握られていた。

『犬神流免許皆伝』と書いてある。


鈴がなって神が召喚され、月影が死に生贄は捧げられた。


赤子が宙に浮き、美しい女性へと急成長する。

女性『月影を殺した追手が見ています』


驚くきくゑに印籠を投げ渡した。

女性『私はかぐや姫、それを飲んで月影の仇を討ちなさい』


『仇』

混乱するきくゑは『仇』と言う言葉を聞いて我に返った。


印籠を開けると一粒だけ丸薬が入っている。

それを飲みこんだ。

無味無臭。


きくゑ「どんな効能が?」

聞く前にすでにかぐや姫は消えていた。

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