第11話 心の泥棒
前日、寝ずに仕事に行っていたので、今日は早く床に着こうと決めていた優里。
そんな中、店長からの来店報告の電話で伝えられたお客様は、まさかの裕太だった。
(何がどうなっているの....)
とりあえず、ベッドに入って昨日、今日の出来事を振り返ってみる。
優里にとっては、凄まじい2日間だった。
考えても考えても出口のないトンネル。
優里の思考は段々と停止していった。
そして、そのうちに頭がぼんやりして行って、気づかないうちに、眠りの中へ落ちて行った。
...
「もうすぐ帰るからね。」
と、裕太から電話がかかってきた。
優里は晩御飯の支度をしながら、裕太の帰りを心待ちにしていた。
でも待てど暮らせど、裕太は帰ってこない。
電話をかけても、電話にも出ない。
朝方、優里は裕太を待って寝落ちしていた。
パッと目が覚めて、裕太が帰って来ていない事を確認する。
やっぱり裕太は帰って来ていない。
ふと、テレビの電源をつける。
結婚式の特集をやっていて、そこに映るのは....
タキシード姿の裕太と、顔は影になって見えない物の、見知らぬウエディングドレスを着た女性であった。
2人は腕を組んで笑っていた。
(やめてーーーーーーーー!!!!)
大声で叫びたいのに、今度は声が出ない。
苦しい、苦しい、苦しい、
助けて、助けて、助けて、助けて..
誰か....!!
..............
と、パッと目を見開くと、そこはベッドの中だった。
どうやら、寝落ちしてしまっていたようだ。
時計を見ると、まだ朝の6時前だった。
朝起きなくてはいけない時間まで、まだあと1時間以上もある。余裕で二度寝できる時間だったが、すっかり目が冴えてしまった。
寝不足も募って、優里は心も体もすっかり疲弊していた。全く、裕太にはどこまで振り回されなければならないのだろう。
怒りのような興奮がどっと押し寄せる。そうして、一層眠れなくなった。
それから数日の間、仕事は下着屋だけでキャバクラはシフトが入っていなかった。
気にしたくないのに、次の出勤の時が気になった。
店長は、裕太に次の出勤予定を言っておいたと言っていた。
「まさかね。」無意識に、小さな声で呟いていた。
もしまた来たとしたら....
それは嬉しいのだろうか、迷惑なのだろうか.....
迷惑だと、そう思いたいのに。
心の何処かで喜んでいる自分が居る気がしていた。
ただ、やっと裕太の事を考える時間が減って、充実した時間を過ごし始めて居た時に、彼はまた現れて、優里の心を拐っていった。
本当に自分勝手な男だ。
こんなにうんざりしているのに。
(私は一体、何を期待しているのだろう...)
そんな事を考えながら、落ち着かずに日々を過ごした。
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