第10話 フラッシュバック
裕太にバッタリ、キャバクラで会った日の翌日、下着屋の仕事は全然集中出来なかった。
一睡も出来なかったし、前日にはシャンパンも飲んでいたのに、眠くなるという感覚はなく、ずっと胸の鼓動が早く感じた。
この日は昼間の仕事だけだったので、下着屋が終わると急いで家に帰ってシャワーを浴びた。
思い返すと昨日、「指名させて欲しいんだ。」と、裕太は聞こえるか、聞こえないかくらいの小さな声だったけれど、でも確かに、そう呟いていた。
(なんだったんだろう....。)
新しい彼女の事も、何も話さなかったし、もう真相は分からない。
次に会ったら、ふざけんな!って。
そう言ってやろうと決めていたのにって。
できたらビンタの一つでもしてやろうと。
何度も何度も想像していたのに。
でもいざ彼を前にすると、手どころか、言葉も出ないし、緊張して、体が固まって動けなくなってしまった。
「もう、忘れたいのに。」
小さく呟いた声は、心臓の鼓動に掻き消される様だった。
シャワーから出て、携帯を見ると、キャバクラから着信が入っていた。
なんだろう??
とりあえず今日はキャバクラの仕事は休みだし、ゆっくりスキンケアをして、髪を乾かしてから折り返そう。
優里はそう思って、ノロノロとスキンケアをして、髪を乾かしたりした。
少しのんびりし後に、ようやく携帯をもう一度手に、キャバクラに電話をかけ直した。
電話は店長が出た。
「ああ、七海さん?今日の来客報告の電話です。」
いつも休みの日にキャバクラに自分のお客さんが来ると、店から報告の電話が入るのだ。
「はい、ありがとうございます。誰ですか?」
毎度の事なので、いつもの調子で答える。
「昨日ついた、フリーのお客様なんだけど。」
「え...?」
優里は言葉を失った。
だって昨日は2組しか客席に着いておらず、それは裕太の席と、佐藤さんの席の2組のみだった。
そして、佐藤さんの席は、指名が入っていたので、フリーでついたのは裕太の席ただ1組だった。
「ほら、vipルームに入る前に着いた、メインルームの方だよ。」
優里の反応で、ピンと来てないと思ったのだろう。
店長が続けた。
「ああ、はい。分かります。」
優里は、慌てて答えた。
「一応、今週の出勤予定伝えておいたから、また、来てくれるといいね。」
と、店長。
「...ああ、はい。ありがとうございました。」
優里は心なく、ぼんやり答えた。
「まあ、休みの日にごめんね!おやすみなさい。」
少し違和感を感じた様だったが、店長も早々にそう言って電話を切った。
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