第5話 仕切り直し
今日は、昼間も夜も仕事が休みだ。
昨日は昼間、下着屋の仕事の後、夜キャバクラのバイトでシャンパンを飲んだ。
そして、飲み過ぎて帰ってきて、トイレに直行しリバースしてしまったのだ。
寝る前に辛うじて、洗顔と歯磨きだけしてシャワーも浴びずに床に着いたのだ。
今日は昼頃に目が覚めて、気だるい体をゆっくりと起こした。
(最近いつも、シャワーばかりだったけれど、お風呂に浸かろう。)
そう思い立って、風呂を沸かした。
湯船に浸かると、風呂の温かさがじんわり身体中に広がり、アルコールが少しずつ抜けていく感覚があった。疲れた身体が癒されていく。それと同時に、心までが癒される感じがした。
心のデトックスとでもいう感じだろうか。
そんな風に湯船に浸かって居ると、近頃詰まって居た様々な感情が押し寄せて来た。
三十路にもなって、独身で彼氏もおらず、昼間の仕事だけでは生計も立てられなくて夜はキャバクラで働いている。
そんなネガティブな気分を、全て前向きに変換してみよう、とふいに思い立った。
独身で彼氏も居ないけれど、誕生日には12時ぴったりに連絡をくれる友人が居る。
短大を卒業してから、今まで、一度も仕事を変えずに働き続けている。
こうゆう粘り強く一つのことに取り組めるところを、もっと自己評価してあげても良いのではないか。
そして、三十路間近で思い切って始めたキャバクラだが、この歳にしてそこそ、お客様も掴めているなんて自分もなかなかやるではないか。
そうやってネガティブに考えて、落ち込みがちだった部分を一つずつ肯定的に捉えるようにしてみる。
世界が少しずつ、明るく見えて来る様に感じた。
三十路にでも、独身で彼氏も居なくても、昼間の仕事だけでは生計も立てられなくて夜はキャバクラで働いていようとも、世の中捨てたもんじゃないんじゃないか。そんな気分になってきた。
要するに、捉え方次第なのだろう。
そうして、身体をタオルでリズミカルにゴシゴシ洗いながら、自分を労わる。
こうやって、自分を励まし奮い立たせ、元気を出して前を向く。
そうやって生きていくのだ。前進しているかは分からないけれど。それでも悪戯に時は経つのだ。必死に、それにしがみつきながら生きていく。生きていくだけでとても骨の折れる事だ。それは優里はもちろん、あのボーイや、美月、茜、そして裕太だって..同じ事だろう。
浴室に付いているデジタル時計も、入浴を始めてから一時間程、時を進めていた。
さて、そろそろ出よう。
(明日からまた、頑張ろう。)
そう心に決めて、この日は早めに就寝することにした。普段よりも、ずっとぐっすり眠る事が出来た。
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