第16話 開拓惑星の探索チーム
睦月さん達を歓迎してから、一月もたつと、追加人員も新たな生活に慣れて仕事が捗るようになってきた。やはり人手が十分にあると、効率と進捗が違う。いくつかの施設には専従の責任者を割り当てることができて負担が減った。もっとも、責任者になっても人海戦術で行う作業には全員駆り出される。
開拓地No.49-88-0003~6については、造成したてで肥料の投入が足りていないので、蕎麦の栽培をすることになった。蕎麦か、蕎麦を含む雑穀米や食パンを食べる日々が待っているようだ。他の作物の作付けは来年以降のお楽しみだ。今の人口ならば開拓地No.49-88-0001での生産量だけでも最低限の生活はできる。
開拓地No.49-88-0007は綿や麻の作付けに挑戦することになった。いつまでも母船からの補給に依存できないので、将来的には服飾関係も自給自足する必要がある。
個人的には、開拓地No.49-88-0008~9に畜産関係を移転できたことが大きい。動物を相手にする仕事だけに負担になっていて、数を増やすだけで限界だったのだ。卵や乳製品や肉が食事に使えるようになると、食生活が豊かになるので大いに期待している。羊毛なども期待できる。
春から初夏にかけた作付けが終わる頃、今回の降下事業の殿として周辺探索チームが到着した。生活環境の整備が終わったら、No.49-88-0001で週一で行っている連絡会兼食事会で、他のメンバーに紹介した。しばらくは、現在いる41名で力を合わせていくことになる。賑やかになったものである。
周辺探索チームが本格的に活動し始める前に、周辺探索チーム4名と私と睦月の6名で打ち合わせを行った。周辺探索チームは独立性が高いが、農繁期には手伝ってもらう必要があるし、異動のために燃料を使ったり調査のために物資を消費するので、無関係ではいられない。
周辺探索チームのリーダーである遠江太郎の説明で打ち合わせが始まった。
「当面は、開拓地の東にある小山の資源調査を行い、次に開拓地から半径20km以内にいる外部の生物の調査を優先します。その後、調査範囲を拡大しつつ、防災的な猛威の有無を調査していくことになります。日程については、資料を参照してください。その季節でなければできないこともありますので、ざっくりとしたものになります。」
「ご存じのように、外部には未知な点が多いです。身の安全を優先して、戻ってくることを優先してください。」と答え、事務的な話が進んでいく。
長期的に見れば、利用可能な鉱物資源がどれだけあるかによって、生活の文明度が変わってくる。事前に、小惑星産の鉄などの金属系の資源は母船である程度精製して、隕石として開拓地候補地の周囲に落とされているので、所在を確認して利用可能な場所に集積しておく必要がある。建材に使用したりする石材や石灰などの資源については、地層がテラフォーミングの影響であてにならないので、実地に調査する必要がある。最後にレアメタルがどれだけ使えるかによって、ハイテク製品がどれだけ使えるかが変わってくる。最悪の場合、IT機器やロボットが老朽化して使えなくなって、19世紀~20世紀初頭の生活水準になる可能性がある。高度な文明を維持するには、一定以上の人口と、資源が必要なのである。
短期的には、周囲で利用可能な生物資源や、猛威となる生物の有無が問題となる。利用可能な生物資源があれば、生活が豊かになる可能性がある。余剰分を放流している淡水魚の生育状況が気になる。海については、どんな生物がすんでいすのか全く分かっていない。地上では、植物や昆虫類が広く生育していることは確認されているが、母性から持ち込んだものの亜種も確認されており、具体的に何がどのくらい生育していて、人類の猛威になるものがいるかどうか確認はできていない。小規模である現在は問題あなくとも、将来、人類の生活圏が広がっていったときに安全かどうかわからないのだ。
明日から、ヘリコプターを使って、衛星写真で確認されている地形の確認作業を始めるようである。
文芸作品や映画に出てくる冒険家という風情の周辺探索チームは頼もしく見える。何を発見してきてくれるのかは、入植者共通の期待と不安の的なのである。
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