第8話 落としたスマホ 八

 そうして俺は勉強を開始し、少し乗ってきた所で喉が渇いたため、また休憩がてらに1階のリビングの冷蔵庫までジュースを取りに行こうとした。そして、階段を降り始めた、その時―。

 「お前、本気なのか?」

父の声が聞こえた。

 「もちろんよ。あなた、真剣に考えてくれてる?

 …私たちの離婚のこと。」

 俺は、両親の話し声を聞き、階段から動けなくなった。

 「何を馬鹿なことを言ってるんだ!」

「馬鹿な方はあなたよ!私の気持ちに、何も気づかないで…。」

「しっ、声が大きいぞ!正人に聞こえるだろ!」

 「そうね。正人には悪いわね。

 だから正人が大学に入るまでは、このまま『仲のいい夫婦』の演技を続けないといけないわね。」

「演技…だと?」

「そう、演技よ。それは正人のため。だから、協力してくれるわよね?」

 「…。」

俺はそこまで聞き、両親に気づかれないように忍び足で2階の自分の部屋へと戻った。

 「そうか。俺の両親は、仲が悪いのか。

 それも、離婚を考えるくらいに…。」

俺はそんな両親、演技をしている両親に嫌気がさした。

 …いや、それだけではない。俺はそんな両親の心の変化に全く気づいていなかった自分自身に、もっと嫌気がさした。

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