第34話 酒場1

 扉を開ける。

 そこはテーブル席が9つほどある、割と広い酒場だった。

 カウンター席もあり、ひとりで飲むのにも対応しているようだ。

 ちびちびとひとりでやっている者は少なく、多くはテーブル席で酒の入っているであろうジョッキを振り上げ、赤らんだ顔を恥じることもなく晒して語り合っている。

 他のテーブル席も似たようなもので、とろんとした目つきをしつつ今にも眠ってしまうのでは、と思える者もいた。

 酒乱の席には入りたくないと思い、ひとりで飲みたかったおれ。バーのマスターと目が合った。

 くいっと片手を上げてジェスチャーをもらい、カウンター席の隅を目指す。

 ようやく人心地つけたが、店内の騒がしさは相変わらずで、つい苦笑してしまった。

 宴会芸を披露する者もでてくる有様で、いよいよ収集がつかなくなるのでは、と心配になりマスターに振り返るも、見守る視線は温かい。「好きにやらせておけ」と言っているようだった。

 おれは、テーブルに置いたままのジョッキに残った酒を見て微笑し、一気に飲み干した。

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