第14話

練習します。駄文です。


 チェーン展開をしている焼き肉屋さんだった。

 入り口をくぐるとすぐに白いエプロンと帽子を身につけたお姉さんが寄ってくる。何名様ですか、と聞いてくる。男が三名で、と指を三本立てて応えた。残りの2名は黙ったまま視線も合わさず横にいた。



 黙っていた男のうちのひとりが、店内を見渡す。

 黒を基調とした壁は外の壁面と同じで、なにか強い意志を感じさせられる。

 テーブル席とカウンター席、そしてそれに座る客(人間)で店内は埋め尽くされていた。よくよく見れば、まだ片付けが終わっていないのか、食器が出しっぱなしになっている席も散見できる。鉄板を埋め込まれた皿のようなものもあった。



 会話のない3人の男は、横並びのカウンター席に通された。外を見ることのできる大型のガラス窓に面したところだった。


 男たちのうち、2人は話し始めた。残る一人は黙ったままだった。黙ったままぼんやり前を見つめていた。

 まず目に入ったのは食器棚だった。棚に並べられているのは、フォークやナイフやペーパー布巾、それに塩こしょうといった調味料。

 塩やこしょうの入った木製の入れ物は、一見するとチェスの駒をおおきくしたように見えて、中身や使い方を想像するには至らなかった。手で持ってみて、振ったり、匂いを嗅いでみたりする。周囲からみたら、田舎から出て来た恥ずかしい男にでも映ったことだろう。



 男は塩やこしょうの入った容器を棚に戻し、窓の外に視線を送る。広い道路を左右に過ぎ去ってゆく車たちがあり、ただただ見ていた。店内の喧噪など耳には入らなかった。


 男にとってそこは自分の知らない世界だった。

 だから硬直するしかなかった。


 その男を、残り2人の男は無視していた。敵視とは呼ばないほどに、まるでそこにいないかのように無視していた。しかし無視された男は、別段気にする様子はなかった。



 他の2人の男は話を中断したようだった。

 メニューの冊子が左隣2つぶんのカウンターにそれぞれ広げられる。それを見た男も倣って、カウンター席の下にある引き出しからメニューの冊子を取り出す。メニューを広げても、いくつもの料理の画像が飛び出しそうになっているだけでわけがわからない。


 男は、場を仕切っていた男の勧めで、最も平凡のメニューを選んだ。肉の量も質も平凡、お米の量も平凡。トッピング? なにがなにやら。

 男はただただ時間が過ぎるのだけを待つのだった。

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