第17話 魔力補給の困難
なんか似たようなエロスで申し訳ない……いやでも私的には好きなので許して。
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「ご……ごしゅじんさっ……まぁっ……」
ミレディの艶やかな声が漏れる。かつては聞けなかったが、なんともまぁ、背徳的で、更にご主人様呼びは……凄いな、うん。
ルナはともかく、ミレディは精神も年相応。そんな子が今、俺の目の前で、喘いでいるのだ。
それはもう興奮───しない。当たり前だ。妹より幼いんだぞ。
しかも部屋にはルナとソティも居る。この状況で間違いを犯す方がおかしい。
「もうちょっと我慢してくれ。ゆっくりやってるから」
「は、はい………んっ……」
それにしても、もしかしてと今更ながらに思うが、ルナより魔力に敏感な分、感じやすいのか。
それに加えて、数をこなせばこなすほど、体は魔力に敏感になっていく。正確には俺の流す魔力に、だが。
時間を空ければ多少は改善するものの、それでも一度魔力を通すだけで、すぐに元通り───いや、それ以上に鋭敏になってしまう。
今だって、コツを覚えスムーズかつ刺激が少ないように魔力を流してると言うのに、初日の頃よりも感度が上がっているのか、身を捩り、漏れる声が多い。これは俺が下手になったのではなく、身体の方が敏感に反応してると考えていいはずだ。
「ひぁっ……はぁっ……ッ、んっ」
ミレディの口から水気を伴った吐息が出る度に、部屋を淫らに染めていく。
嬌声を抑えるために口元に手を当て、しかし時折ピクンと震わせた拍子に思わず漏れてしまう声と吐息。精一杯我慢しようにも、快感にあてられ頬は紅潮し、身を捩る度に服がはだけていき、外気は敏感になった肌へイタズラする。
それが外からの快感となり、内と外、両方から責められた体には、ある種自慰行為をも超える快感が走り抜けているのではないか。
───きっと正面に回れば、そんな悶える姿を視界に入れることが出来る。
ミレディだって、毎回毎回こんな恥ずかしい姿を晒したくはないだろう。あ、いや、実際に正面からは見ていない。あくまで今のは想像であるが……。
そろそろ本格的に他の方法を考えなくてはならないか。
「……他の方法って?」
「取り敢えず体に後遺症が残らないような安全な方法だ。魔力を回復させるポーションとか、そんな感じのやつを……っと、大丈夫?」
「っ、ひゃ、ひゃい……」
ビクッと震えて我慢するミレディに声をかける。今のは波が来たってことだろうな。次が来る前に早く終わらせねば。
ミレディの白黒ロリータ系の服が、ゴスロリと言うよりは、相も変わらずメイド服に見えて、そんな相手にご主人様呼びさせてしかもこんな状態にさせているのは、果たして犯罪にならないのだろうか。
ちなみに色々と模索した結果、心臓に近い方がやはり効率が良いらしく、服の中に手を潜り込ませ背中を触る形をとっている。だから背中をはだけさせており、ミレディが身を捩る度に肌を余計に晒してしまうわけだ。
前から見たら上半身はかなり際どいだろう……背後からだと、身長差のせいで、若干の主張をする胸やその突起を、はだけた服の隙間から覗くことが出来てしまうので、俺はあらぬ方向を向いている。
にしても……下着は付けてないのね。背中に手を触れさせながら澄ました顔で思う。たまにルナとの感触の差に困惑することはあるが、それは大きさの違いと言うよりは、付けているか付けていないかの差だったのか。そう言えばソティも柔らかかったが、アレも付けていなかったからなのか。
当然そう思ったことは口にも顔にも出さない。今度それとなくルナに伝えて見繕ってもらおう。
「じゃ、続けるよ……どちらにせよ、この先これじゃあミレディが大変だろうし、せめて瞑想だけでも覚えさせるべきか……」
「瞑想?」
「瞑想。俺はあんまり使わないし、一般的にも使われてないんだけどな。気休め程度に魔力が回復する」
「瞑想って、座禅組んで無心になるやつ?」
「この世界に座禅は無いけど、まぁそんな感じ」
少しだけ赤い顔をしながら聞いてきたルナに答える。要は魔力回復に専念するという話だ。
立ち止まって動作をやめ、呼吸を整えれば体力が回復しやすいように、魔力も回復に専念することで多少は改善が見込める。
とはいっても微々たるものだ。全体的に見れば5%、多くて10%回復量が上がるぐらいで、そこまで大して効果はない。やった方がいいだろうが、やらなくてもいい程度のもの。
ちなみに俺が使うと意識が飛ぶような感覚に陥ってしまうため、ほとんど使わない。
「……その瞑想を完璧に使いこなせば一瞬で魔力を回復……」
「出来ないと思う」
「ですよねー」
「大体、一気にそんなに回復させたらガタが来そうだろ」
「そう簡単にチートの会得にはならないか……」
なんだ、まだ諦めてなかったのか。
ミレディなんか今ある力で頑張って練習しているというのに、ルナは楽なチートを求めるとは、これが姉妹か。
「いいでしょ別に。こんな近くにチートの権化が居るんだから、夢見るくらいは」
まぁ持ってる能力はチートそのものだが、俺はまともに使ったことないぞ。[完全記憶]はレギュラーだけど。
俺が普段使ってるのは、武器術と魔法ぐらいのものであるし、実を言うと宝の持ち腐れ状態だ。
常時発動するスキルは結構あるが、殆どは封印しているのです。
「そういえばご主人様は縛りプレイをしてたわね……」
「パラメータが高すぎてまともに戦闘にならないと思って。あとスキルの効果がな……」
パラメータ倍加とか、剣聖とか、賢者とか、もうお腹いっぱいだ。武器術と魔法だけで十分だ。
後は全部素で補える。
思考が逸れているうちに、ミレディがまた一際大きく身体を震わせた。
「ひぅ……ッ!」
「っと、意識を離しすぎたか……ゴメン、ミレディ」
「い、いえっ……だい……じょうぶで、すっ……」
赤い顔で、荒い息で、甲高い声でそう言ったミレディ。肩越しに少しだけこちらを覗く顔が、また……興奮はしないが、背徳感自体は感じているだけに、バツが悪い。
ルナがジト目で問いかけてくる。
「……ご主人様わざとじゃないよね」
「流石にそれは無いからな」
ジト目にジト目で返す。いくら何でもそんなことするはずがないだろう。
……いやまぁ、嬌声は確かに好きだが。それでも有り得ない。
「ご主人様ってやっぱり変態だと思うの」
「でも妹のそういう姿を見て多少なりとも興奮してるルナも、変態だと思うぞ」
「───は、はぁっ!? べ、別に興奮なんかしてないじゃん!」
いつも赤い顔で少し息が荒くなっているのはそういう理由じゃなかったのか? てっきり、同性とはいえ可愛いミレディのそういう声に思わず、というものかと思っていた。
またミレディの肩が跳ねてしまったので、特に返答はしなかったが。そろそろ真面目に集中しないとミレディからも疑いを持たれてしまう。
ちょっと魔力が規定のルートから逸れるとこれだ。俺ですらこれなのだ。他の人が───そもそも出来る人物自体居るのか定かではないが───魔力補給をしたら、大変なことになっているだろう。
それはもう……大変なことに……うん。
ミレディの心臓が早鐘を打つのが、手を通して伝わる。
「本当に、さっさと別の方法を見つけなきゃな……」
役得と思う暇すらなく、心臓に悪いこの状況は脱したかった。
◆◇◆
ところで、今日は2回目の休日であるからルナ達と長いこと魔法の練習をしていた訳だが。
3回目の魔力補給でミレディがダウンしかけたので、そこで終了。『ダウン』というのが単純に体力切れという意味ではなく、
今まではまだ行けていたので、補給をしてしまったが、まさかそこまで行くとは思わなかったのだ。咄嗟に『
流石にルナからの罵倒と叩きは、俺も甘んじて受け入れた。すまなかった、ミレディ。
結果、これ以上は無理だろうなと判断して、タオルをルナに渡して寝かせておいた。女の子だからいいが、例えばこれが男だった場合、その場合も快感のせいでこんな風になるのだろうか……少し考えて、精神衛生上よろしくないため止める。
男相手にはしないようにします。
とにかく、残りの時間が暇になってしまった俺は、ソティと共に学校の方へと来ていた。
休みとはいえ、別に閉まっている訳では無い。この時期は自主練のために訓練場を使用する生徒が多いということもあるが、普段も開放しているのだとか。
もちろん、中に入れるのは関係者のみというのは相変わらずであるが。
イブの姿へと変えてから学校の中へと入り、俺も訓練場を利用させてもらうことにする。娯楽が乏しいが、この世界での生き甲斐といえば今のところ鍛えることだ。
鍛錬を娯楽の代わりとしている訳では無いが、それでも時間潰しにはなる。
「たまには思いっきり体も動かしたいしな」
「………」
同意するように頷いたソティだが、普段は本気なのだろうか。それとも加減をしているのだろうか。具体的なパラメータの数値がないため、ソティがどの程度の身体能力を有しているのかは実はわかっていない。
何となく頭に手を乗せると、ソティはすぐに目を細めてくる。相変わらず猫っぽいというかなんというか。猫耳でもつければさぞ似合うんじゃなかろうか。
「………?」にゃんにゃん
猫耳に反応したのか、首をかしげながらも猫のように手を丸めて体を揺らす……果たしてにゃんにゃんという擬音はあっているのだろうか。
そもそもそのポーズをする辺り、やはりソティの知識は偏っていそうだ。確かに猫ではあるが……。
「………」スリスリ
「あ、あぁ、可愛い可愛い」
求められるのは嬉しいのだが、そんな顔を擦り付けなくても……本当に猫なのではと思いたくなるような仕草は、魔法訓練中にあまり構ってあげられなかったからか。
生憎訓練場ではそれは良く目立つ。
特に俺の名前はクラス外にも届いているため、好奇の視線が多い。ただでさえ視線を集めるというのに……。
変な噂が立たなければいいが、多分手遅れだろう。
「あ、イブ君ー」
現実逃避しながらも、何だかんだ振り払うこともしないでいると、ふと、聞き覚えのある声が耳に届く。
とは言っても、馴染みのあるとかそういう意味ではない。あくまで耳に入っていたという意味に過ぎない。
というのも、それはクラスメイトの女子だったからだ。特別話をする訳でもなく、かと言って別に事務連絡しかしない訳でもない、まぁ良くも悪くも普通の仲と言える相手だった。
そんな彼女は、こちらを見るなりなんの用か近寄ってきた。
いや、きっと具体的な用など無いのだろう。一つ言えるとしたら、その休日に知り合いにあったというにはニヤニヤしすぎな笑みは、俺と会ったのが嬉しいなどという理由ではなく、きっと今の状況を愉快に思っているからに違いない。
俺は取り繕った笑みをその、サーナという名前の女子生徒に向けた。
「アハハ……こんにちはサーナ。変なところを見られたね……」
「こんにちは。いい物見せてもらっちゃったよイブ君。あ、ソティちゃんもこんにちはー」
「………」ペコリ
元気な子だ。前屈みになってソティにも挨拶をして、ソティは頭を下げる。
クラスメイトに、と言うほどまだ俺の帰属意識は無いが、それでもクラスメイトにああいう場面を見られると少なくない恥ずかしさは覚える。
ポーカーフェイスを保ったままそんなことを言っても、ルナには『嘘つけ』と言われるだろうが。
「なになに、2人はデート? 訓練場デート?」
訓練場デート……訓練場デートかぁ……。
果たしてそれはデートと呼べるのか? というかそもそもそんな言葉は存在するのか?
いやそれよりも。
「何度も言うけど、ソティとはそういう関係じゃ───」
「ソティちゃんはどう思う!?」
「………」ギュッ
相変わらず俺の意見は届かない。これ幸いとサーナは割り込んでソティに直接聞くと、俺の腕ではなく相変わらず手を握ってくるソティ。ソティはどうも、他者へのアピールをする時は恋人繋ぎをしてそれを見せつけるらしい。
そのせいで俺の誤解が解けないのだが、ゴシップ好きの少女達にとっては、『そう見えること』こそが重要なのだ。
誤解を解いても今更意味の無いことだと言うのは分かりきっているからこそ、俺も下手に言い訳を重ねないのだ。
諦めている、とも言える。
だからソティが恋人繋ぎをしてきて、その上で上目遣いでこちらを見てきても、そして腕に抱きついてきても、別に慌てることは無い。
まぁ、その余裕が他者にとってどう見えるのかと聞かれたら、また分かれるだろう。
「や、やっぱそういう関係なんだね!」
ソティの積極的な行動に想像を膨らませたサーナは、顔を赤くしながら興奮気味に言ってくる。
対する俺は、肩をすくめるだけに留めた。
今の状況。下手に否定をした方が、図星と捉えられてもおかしくないだろう。かと言って肯定すればそれは本末転倒。余裕を持って図星と捉えられないように否定しても、その否定こそが怪しさを植え付ける。
なら、否定も肯定もせず曖昧にしておいた方が、最終的に噂の範疇に留まる。
過去に地球で、実は叶恵と恋人なのではと疑われた時に身につけた処世術が、今ここに来て役に立つとはな。
今更ながらしみじみと思う俺であった。
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