第5話 迷惑しかかけない勇者



 刀哉達が不満ストレスを解消している一方で、花澤は酷い頭痛に苛まれていた。

 頭痛は昨日の昼頃〃〃〃〃〃から続いており、痛みは増す一方であった。


 「幸吉、大丈夫か? 辛そうに見えるが」

 「……あぁ、大丈夫だ。気にするな」


 腰巾着(と花澤は思っている)の星川からも心配されるが、花澤は強がってみせた。それは、弱みを見せたらつけ込まれるとかそういった考えではなく、単にプライドの問題だ。


 とは言え、そう強がっていても、痛みの増す頭痛をいつまでも知らんぷり出来るわけもなく、少し横になろうと、あたりを見渡して比較的平らな場所を探した。


 その時、ふと視界にキランと輝く光が入った。訳もなく気になった花澤はそちらに目を向けると、そこには迷宮の壁から縦横十数センチ程の水晶が突き出していた。

 最初は、『なんでこんなところに水晶が?』という疑問だったが、そんなものはすぐに消え去った。


 ドクン!


 「っ!?」


 突然、心臓が脈打ったと思うと、頭痛が一層強くなり、そして消えた。


 「……ん? おい幸吉、どうした?」

 「……」


 急にゆらゆらと歩き出した花澤に、星川は声をかけるが返事は無い。花澤の目は虚ろで、足取りも怪しい。


 「……?」


 が、星川は疑問を浮かべるだけで、追いかけることはしなかった。頭痛が酷いから壁に背中を預けて休むのかな? と考えたからである。


 無理に話しかけるのはやめておこうと、星川は花澤から視線を外した。

 

 誰も止める者はおらず、花澤はそのまま壁に到達し、そしてその突き出している水晶に、真っ白な思考のまま手を触れた。


 ピカァン!!!


 「な、なんだ!?」


 その瞬間、あたり1面を閃光が覆い、誰かが叫んだ。


 その数瞬後、先程までいた勇者達は、誰一人としてその場に姿を残していなかった。

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