最終楽章 夢・愛

重なる世界 吹奏楽部合宿復路バス

 帰りのバスの中、最前列左窓側に座っていた愛美は夢を見た。

 高校2年生の時の愛美、そして祈里。通路を挟んでとなりにもう1人いた。見た事のない男子生徒なのだけど同じ2年生でトランペット・パートの子だと何故か確信した。名前は皆本悠二くん。祈里を介しての友達で同じ吹部仲間だ。


 帰りのバスの中、最前列右通路側に座っていた悠二も夢を見た。

 高校2年生の時の悠二、通路を挟んで祈里。そしてそのとなりにもう1人いた。見た事のない女子生徒だけど同じ2年生でフルート担当の子だと何故か思い込んだ。名前は平愛美。祈里を介しての友達で同じ吹部仲間だった。


「ねえ、やったね。私達」と祈里。

「そうだねえ。まさか高校2年で全国金だなんてうれしい」

と愛美も喜んだ。そこに真面目にツッコミをいれるのが悠二だ。

「運が良かっただけだろ。全国まで来る学校って実力も必要だけど差なんてそんなないと思うぞ。審査員の好みもあるだろ」

「それを言ったらおしまいだよ、悠二」容赦ない祈里。

「お前らが舞い上がりすぎなんだよ」


愛美は悠二が食べ物を持ってるに違いないと何故か確信した。


「悠二、お腹すいた。私達にご褒美」

「愛美まで俺にたかるのかよ。あ、プレッツェルが残ってたな。ふた袋。2人で分けて食べろよ」

「ありがとう」

「愛美、悠二からはたかってなんぼ。お礼なんか言っちゃダメだよ」

「あ、そうだった。祈里、指摘ありがとう。だから前言撤回。他にあるならもっと出しなさい、悠二」

「ねえよ」


 三人の楽しい会話は尽きなかった。

「愛美、寝ちゃったか。悠二くん大丈夫?」

 笑顔の祈里が悠二の顔を覗き込んできた。あくびする悠二。

「俺もちょっと疲れたかな」

「寝ちゃいなよ」、悠二も」

 祈里にそう言われたからか、疲れからなのか悠二も寝入ってしまった。

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