17話 もろもろ、入学式
「どこから話したらいいのかな〜。私たちの武器は魔王に作られた武器って言うのは知ってるよね?」
ラミアは淡々と話し始める。
「ああ、アニスは魔王に捨てられたって言ってた」
「ガーロットも魔王に捨てられた槍なの。何でも魔王は自分が使うための最強の武器、魔装機を作るために色々な武器を作っていて、その中の失敗作としてできたのが君のアニスや私のガーロットらしいの」
「その情報はどこから手に入れたんだよ?」
「ガーロットから教えてもらったの」
「アニスは捨てられただけとしか言ってなかたけど……」
なぜラミアの槍、ガーロットはそんなことを知っていたのだろう。
「それはお前の剣が一番最初に作られた魔装機だからだろう」
逆立つ赤毛が特徴の男が口を開く。
「一番最初?」
俺はガーロットの方を見る。
「ああ、俺たち魔装機は体の一部に魔石を埋め込まれる、蒼、翠、橙の3種類だ。石の種類によって作られた年月、能力が変わる。お前の魔装機についている赤い魔石は俺の知っているその3種類の魔石のどれにも当てはまらない。捨てられる前に魔王が言っていた、『一番最初に作った赤い魔石の武器が一番マシだったな』と。お前の剣にはその赤い魔石がある。ってことはお前は一番最初に作られた魔装機ってことになる、多分な」
「なるほど……」
初めて聞くことばかりで少し混乱する。アニスも同じようで驚いた様子だった。
「そして魔装機には持ち主の身体能力を大幅に上げるのと天職を変えるっていう不思議な力がある」
ラミアが話を続ける。
「それは知ってる。俺は元々非戦闘系の天職だったけどアニスのおかげで魔剣士って言うのになれた」
「そうだったんだ。とりあえず私たちが知ってることはこれぐらいかな〜」
ラミアは話に区切りをつけ大きく伸びをする。
「あ! 忘れてた。多分私と同じ学年であと2人、魔装機使いがいるよ」
しれっとした顔で言う。
「2人……ね。ありがとう、覚えておくよ」
そのままその場を去ろうとすると肩を掴まれる。
「さあ、話したよ! さっきの影に潜るスキル教えてよ〜」
そのままなかったことにしようとしていたこと掘り返してすごい勢いでこちらに近づいてくる。
がしかし。
「おい、お嬢もう帰るぞ。疲れたから寝る」
ガーロットがラミアの首根っこ掴みそのまま持ち上げる。
「あ! 何するのよガーロット!! まだあのスキルのこと聞いてないじゃない、離しなさい!」
手足をばたつかせてなんとか地面へ降りようとするがガーロットの手はビクともせずそのまま歩き出す。
「俺にはあんなスキルねえからアイツらに話しを聞いたとこで使えねえよ。ほら帰るぞ!」
駄々をこねるラミアを言い聞かせながら2人騒がしくその場を去る。
「………」
「………」
嵐が去ったような感覚に陥り俺とアニスは少しの間だけ無言になる。
「どこかでお昼でも食べるか」
「そうですね、少し疲れました」
アニスの表情はいつもよりぐったりしており本当に疲れたようだった。
そうしてどこか飯どころを探しに飲食店の並ぶ通りへと足を運ぶ。
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合格発表から1週間がたち、今俺は学園から支給された制服を身に纏い、10人乗りの豪華な馬車に乗って学園へと向かうべく。深い森の中を進んでいた。
バルトメア魔法騎士学園は王都の近くに位置する森、ラグラスの森の中にある。
ここならば敷地を気にすることなく学園を建てることができるし、魔物もいるので実践的な訓練もできるとのことでこんな所に学園があるらしい。
学園ってどんなところなんだろう、楽しみだな〜。この人たちも試験に合格したってことだよな、友達できるかな、緊張する。
見知らぬ顔の男女が乗った馬車の中でこれからの学園生活に胸をふくらませる。
1時間ほど森の中を走り、窓から学園の校舎が見えてきた。
「うお!」
そこにはお城のような建物が森の中に静かに聳え建ち、これからここで学ぶのだと想像すると心が踊ってきた。
馬車に乗っていた他の人も驚きの声を漏らし驚いていた。
大きな門をくぐり学園の中へと入り、広々とした綺麗な庭園や噴水、花々などがお出迎えをしてくれる。
馬車が止まり、目的地へと到着する。順番に馬車から降りると一人の係員が待っており入学式が行われる会場へと案内される。
会場に入ると中は豪華な装飾が施され、たくさんの上級生や偉そうな人や貴族かなにかの身分の高そうな人が拍手をして歓迎してくれる、さらに国王のジョン=バリアントも式に出席しており自然と背筋が伸びる。
「これよりバルトメア魔法騎士学園、入学式を執り行う!」
新入生全員が指定の席へ座ると司会の男が声を張り宣言する。
そこからはこの学園の教訓だったり、来賓の挨拶があったりと言ってはいけないのだが退屈な時間が続いた。
特に来賓の挨拶がすごい100人近くいる来賓の人達の話を1人ずつ聞かされるのだ、最初は頑張って聞けるのだが後半は適当に聞き流していた。
びっくりしたのは最後の国王の話が1番短かったことだ。
「おめでとう」の一言で終わるのはさすがにびっくりした。
次に新入生挨拶が行われた。挨拶は毎年試験でトップの成績だったものが選ばれ、その人がすることになっている。
「新入生代表、ラミア=アンネット」
「はい」
下の方を意味も無く見つめ早く終わらないかな〜と考えていると聞いたことのある名前と声が聞こえてくる。顔を上にあげると胸を張って堂々と歩くラミアの姿があった。
壇上に上がる階段を上り一礼する。
「今日、この素晴らしい日を……………」
普段ののんびりした感じではなくシャキっとした凛々しい姿で挨拶をそつなくこなす。
ラミアのやつ成績トップだったのか。びっくりした〜。
……いや、別に不思議でもないな隣で先に始めてた?ってぐらい速く筆記終わってたし、実技もあれだけすごかったんだ成績トップもうなずけるな。
数分もせず挨拶を終え最後に学園長の挨拶へと移る。
「はい、どうもー、ここの学園長やってまーす、レイブン=アーゲードでーす」
白いローブを羽織り、長い白ひげと優しそうなニッコリした目が特徴的な禿げた老人が壇上へと上がり場の空気には似つかわしくないフレンドリーな口調で話し始める。
「さて、今日から君たちはこのバルトメア魔法騎士学園で騎士や魔法師、はたまた冒険者になるため訓練や勉学を積んでもらいます。きっと卒業する頃にはここにいる半分の生徒も残らないでしょう、それほど厳しい生活がが君たちには待っています」
ゆったりと落ち着いた声で言う。
「今年の新入生は粒ぞろいだと聞いています。死ぬ気で頑張ってくれたまえ、期待しているよ」
最後に目を大きく見開き先程は少し気迫のある雰囲気でそう言うと壇上から降りた。
こうして俺の夢を叶えるための学園生活が始まりを迎えた。
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