16話 合格発表と戦闘狂
さて、試験から2日がたち今日は合格者の名前が広場に張り出される日だ。
これで俺の名前がなければ村へと戻り農民としての人生がまたやってくる。それだけは阻止しなければ行けない。
なんか奇跡が起きて合格しててくれ!頼む!
アニスと一緒に学園で貸してくれている宿舎をでて広場へと向かう。
「やっばい、心臓がバクバク言ってるよ……」
自分の胸に手を当て鼓動の速さを確認する。
「わ、私もなんだか緊張します」
アニスも胸に手を当て緊張しているようだ。
宿舎から広場まではそこまで遠くないので、すぐに目的地までつく。
「うわ! いっぱいいるな〜」
結果の張り出された掲示板の前は人でごった返しててとても結果が見えそうにもなかった。
合格して喜ぶ者、自分の番号が乗っておらず肩を落とす者、野次馬が合格した人を胴上げしたりとやりたい放題だ。
人の波を何とか押しのけ掲示板の前に行き、自分の番号を探す。
ちなみに俺の番号は4444ととても不吉な数字だったりする。
自分の番号がないか4000番台の列を上から順に確認していく
4008、4012、4283………4432、4442、5000………
な、ない………。俺の番号がない!
「終わった………」
肩を落とし、そのまま地面に崩れ落ちたくなる。
「あ! マスターありましたよ! そちらの列ではなくあちらです」
アニスが先程見ていた列とは違う列を指さす。
「アニス、ありがとう。でももういいんだ、これが俺の実力さ」
「変なこと言ってないで見てください! ほら顔上げて!!」
俺の腕を引っ張り顔を上げようとする。
「え?」
顔を上げアニスの指がさす所を見る。
そこには試験官特別推薦と書かれた下に3つの受験番号が572、3590、4444の順番で書かれており、俺の受験番号もしっかりあった。
特別推薦?なにそれ?なんで?だって俺筆記も実技も散々だったと思うんですけど??
なんか知らんが受かってた。
「やりましたねマスター!」
アニスが力強くこちらの両手を握ってくる。
「お、おう。受かった。受かったぞアニス!!」
こちらも手を握り返し大声で叫ぶ。
「あ、レイル君だ〜。結果どうだった?」
アニスと喜びを噛み締めていると後ろから聞き慣れた声がする。
「おお、ラミアか無事受かってたよ。そっちはどうだった?」
「うん、私も合格だったよ〜」
「まあそうだよな。それより実技の時倒れたけど大丈夫か?」
「うん、ただの魔力切れだったし問題ないよ。ありがと」
「そっか、それで……お前の後ろに立ってる厳つい赤髪の人は誰?」
ラミアにあってからずっと気になっていたが黙っていたことを聞く
ラミアよりも数十cm背の高い真っ赤な髪とジャケットが特徴的な男がこちらを睨みつけていた。
「説明の前にとりあえず人のいないところに移動しようか」
ラミアはこちらに背を向けどこかへ歩き出す。
・
・
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素直にラミアの後ろをついて路地裏の方へ歩いて行く。
しばらくすると大きな壁が道を塞ぎそこで行き止まりになる。
「さて、それでどこから聞こうかな」
そこでラミアはこちらに振り返く。
「レイル君、君はどこまで知っているんだい?」
「どこまで知ってるってどういう事だよ?」
質問の意味がわからず聞き返す。
「とぼけないでよ、その娘が悪魔で魔剣ってことはもう知ってるから」
「な!?」
どうゆう事だ、いつバレた!?
いや、焦るな。ここはとりあえず平静を装え。
「何を知ってる?」
アニスを庇いつつ一歩下がる。
「嫌だな〜、そんな怖い顔しないでよ。似たもの同士仲良くしよ?」
「似たもの同士?」
「そう、同じ魔装機の持ち主どうし仲良くしよ?」
話が全くつかめない魔装機ってなんだよ。
「ほんとに何も知らないの?」
ラミアは目を見開き驚く。
「何も知らん。さっきからなんのことを言ってるんだよ?」
「そっかあ、知らないのか〜」
ラミアは勿体ぶってなかなか話そうとしない。
「……なんなんだよ」
少し腹が立つ。
「ねえ、なんのことか知りたい?」
「そりゃあそんな言われ方すれば誰でも気になるだろ」
「そっかー、それじゃあ私に勝ったら教えてあげる!ガーロット!!」
「やっと出番か」
後ろに立っていた赤髪の男は真紅に輝く槍に姿を変えてラミアの手元へといく。
「この前の試験の時に見た槍!?」
ラミアはさっきまで感じなかった殺気を露わにしてこちらに槍を向けてくる。
「クソ、なんだよいきなり! アニス、頼む!」
こちらもアニスを剣の姿に変えて中段に構える。
「うん、やっぱり綺麗な剣だね、筆記試験の時からずっと君と戦うの楽しみにしてたんだ〜」
ラミアはぴょんぴょんと飛び跳ね準備運動をする。
「魔装機どうしの戦い、どうなるのかな〜。面白くなってきた!」
声を弾ませラミアは突進をし、上段から槍を振り下ろしてくる。
「ッ!」
何とかそれをアニスで受け止めて弾き返す。
続けて一歩踏み込みアニスを横に薙ぐ。
「よ!」
ラミアは俺の攻撃をバックステップで軽々躱す。
「いいねえ〜、さすが魔装機を持ってるだけあるよ。やっぱり自力が普通の人とは違う!」
「まだ、半分も力出してないクセによく言うよ」
タイラスの時はもっと速かった、舐められてるってことだよな。
「それじゃあ、次はもっと速く!」
地面を蹴りさっきよりも素早く加速し、距離を詰めてくる。
まだ追える。
脳が瞬時にそう判断して受けの体制を取る。
「ガーロット!」
しかしラミアはスキルを使いさらに速く加速し攻撃を仕掛けてくる。
「やばい!」
目の前に黒いオーラの壁を展開して何とか攻撃を防ぐ。魔力障壁だ。
「へえ! 魔法も使えるんだ〜」
ラミアは俺の防御魔法に驚いた顔をする。
「それじゃあこっちも魔法使おっかな〜」
ラミアは深く腰を据えて体に蒼いオーラを纏う。
あれはやばい!あの攻撃をくらったら一溜りもないぞ。
「君たちそこで何をしている!!」
紅い刀身が俺の首元へ突き刺さる寸前で戦闘は中断され横槍が入る。
声のする方へ向くとそこには立派な鎧を身にまとったパトロール中の騎士がいた。
「あちゃ〜、バレたか」
ラミアは悪戯がばれた子供のようにそう言うと俺の背中に隠れ始めた。
「お、おい!」
「何とかして〜、そしたら全部教えるから〜」
「いや、何とかしろって……」
"マスター、スキルを使えばなんとかなると思います"
ラミアの無茶ぶりに頭を悩ませているとアニスから救いの手が伸びる。
「あ、そうか影渡! いやでも、俺の他にも入れるの?」
"マスターの触っているものであれば問題ないと思います"
「おい! 何をブツブツ言っている。早く武器をしまいなさい!」
騎士はこちらに相手にされず苛立っている。
「ラミア、思いっきり息を吸ってそのまま止めろ」
「え?」
「いいから」
「わかった」
手早く済ませラミアの手を掴みスキル影渡を使う。
地面に俺とラミアが吸い込まれる形でその場からいなくなる。
このスキルは息の続く限り影の中を移動できるもので、影があれば人物や建物も無視して移動できる。
「な!? どこへ行った!」
幻覚でも見ているのかと勘違いし騎士は目を擦る。
そのまま影の中を素早く移動し、何とか騎士のいないところまで逃げる。
「ふう、何とか助かったか」
少し開けた樽や木箱が置かれたろ荷物置き場へと出て安堵する。
「ねえ! 今のスキルなんなの!? 私にも教えてよ!」
ラミアは影から出るなりこちら早口でを捲し立ててくる。
「まて、その前にアニスやそこの赤髪のことが先だ」
「ちぇっ、わかったよ」
ラミアは少し不貞腐れながら話を始めた。
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