18話 クラス分け
目を覚まし体を起こす、見慣れない部屋の中を見渡しながら自分が昨日から学園の寮で寝泊まりをしていることを思い出す。
窓を見ると少し厚めの雲が空を覆い隙間から青い影がはみでていた。
「おはようございます、マスター」
ベットの横から透き通る可愛らしい声が聞こえる。
「ああ、おはようアニス」
軽く挨拶をしてベットから降りて学園の制服に着替える。
黒を基調としたブレザーを羽織り、中には白のワイシャツ、下は灰色のスラックスを着る。
「よし、行こうか」
アニスを剣の姿にして、鞘にしまう。朝食を取るべく食堂が混む前に足早に向かう。
ギリギリで席を確保でき、食堂のおばさんから朝食をもらう。
本日の献立は丸パン2つに、芋とベーコンのスープ、サラダだ。村にいたら考えられないぐらい朝から豪華な朝食を噛み締めていただく。
「ここいいかな〜?」
するとまだ会ってそんなに経ってはいないがかなり見慣れた顔と声のラミアが俺の目の前に座る。
「おはよう」
とりあえず挨拶をする。
「レイル君、おはよう〜」
返事をしてラミアは丸パンに手を伸ばす。
「今日から授業だね〜。あ、クラス分け見た?ここに来る途中に張り出されてて見てきたんだけど君と私同じクラスだったよ〜」
「なんか受験番号が近かったりクラスが一緒だったり、何かと一緒だよな」
「そうだね〜。でも誰も知らないよりはいいんじゃない?」
サラダを食べながら言う。
「あれ、ガーロットは?」
「邪魔だから置いてきた。そんなことよりここのご飯少なくない?」
ラミアは完食して空になった容器を見つめ悲しそうな顔をする。
そんなことではないと思うのだが確かに言われてみれば邪魔でしかないか。
森の中にあるこの学園は結界を張っているにしろ、いつ魔物に襲われてもおかしくはないので武器の装備が許されている。剣なら持ち歩いていても邪魔にはならないが槍や他の大きな場所をとる武器は持ち運びにはむいていないか。
「ねえ、そのパン食べないならもらってもいい?」
ラミアは俺の容器に残っていた丸パンをよだれを垂らしながら物欲しそうに見る。
「………どうぞ」
その視線に耐えきれず仕方なく丸パンをラミアの容器に入れる。
「わあ! ありがとう〜」
嬉しそうに笑いながらパンを口いっぱいにほお張る。
なんか和むな。
ふとそう思いながらラミアがパンを頬張るのを見守った。
朝食を取り終え、ラミアと一緒にクラス分けで決まった教室へと行く。
お城のような見た目をしている学園は中もとても綺麗で廊下には見たことのない高そうなツボや絵がところどころに飾られていた。
道に迷いそうになりながら何とか教室へとたどり着き中へ入る。
扉を開けると既に中にはほとんどの生徒が各々自分の好きな席に座っていた。
中は階段状の大教室となっており広々としている。
「あっちの方座ろうよ」
ラミアが一番後ろの窓際の席を指さす。
「お、おう」
階段をのぼりラミアが指をさしていた席に隣同士で座る。
階段を上る際に何人かにチラ見されたのは勘違いだと思いたい。
"マスター! あんなことがあったのになぜこの女狐と一緒に座るのですか!?"
アニスが頭の中で訴えてくる。
"いや、女狐って……。同じ魔装機使いだし、一人でいるよりは誰か知ってる人といた方がいいだろ?"
"マスターは1人ではございません! 私がいるではありませんか!! ……は! やはりこんな剣で悪魔な私なんかより人間の方がよろしいのですね"
わざとらしくグズッと鼻を鳴らしながら頭の中で泣き真似をする。
"いや、そうじゃなくて………"
「難しそうな顔してどうしたの?」
俺がアニスとの会話で頭を悩ましているとラミアが首をかしげこちらを見てくる。
「あ、いや大丈夫。こっちの話し」
なんとなく言葉でにごし誤魔化す。
「あ! アニスちゃんと話してたんでしょ〜? 同じ魔装機使いどうしだし隠さなくてもいいよ〜」
続けてどうぞ、とニッコリと笑って窓の外を眺める。
"またそうやって、私と話しているのに女狐の方に…………"
アニスはアニスで拗ねてしまっている。
なんなのこれ!?
そう叫ばずにはいられなくなるが何とか喉の奥に飲み下す。
「うーし、全員いるな〜。それじゃあ適当に席につけ、始めるぞ」
頭の中でアニスに言い訳をしているとバタンっと荒々しく扉が開き白髪の老人が現れる。
まさかあなたが担任とか言いませんよね?
嫌な汗が体中にこびりつく。
「俺がこのAクラスを担当する、タイラス=アーネルだ。よろしく頼む」
はい、ですよねー。ここに来るってことはそれ以外ありえないですよねー。
他の生徒達も剣戟のタイラスが担任だと言うことに驚き、ざわつく。
「静粛に、質問のある者は挙手をしろ」
タイラスの一言で場が一瞬で静まる。
そこに一人の生徒が挙手をして質問をする。
「あの剣戟のタイラス様にご指導してもらうのはたいへん光栄なのですがなぜこのクラスなのですか?」
「ふむ、何故か。単純だ、このクラスが1番暴れ馬共の集まりだから俺がこのクラスの担当になった。そもそもこの8つのクラス分けになんの意味があると思う?」
質問してきた生徒に質問で返す。
「特に意味などないのでは……」
「違うな、A〜Gとクラス分けされているがAクラスはそのクラスの中で戦闘能力が高いものだけが集められたクラス。つまりこの学園で生き残る確率が高いもの達のことだ。毎年進級の時期になると最低でも2クラスほどの人数の生徒がこの学園を去っていく。大抵辞める奴ってのは能力が低くてこの学園のレベルについて来れなくなったものだ。そんな辞めるかもしれない奴にわざわざ上等な教育をしてやる意味もない。だから最初から見込みのあるやつはこうして上のクラスに集められる。このクラス分けにはそういった意味がある。お前らはその中でも一番素質があるって認められたんだ。理解したか?」
「は、はい」
生徒はタイラスの答えに圧倒されたのかほうけた顔で座る。
「さて、他にいないか?」
誰も反応せずタイラスはそれを見て頷く。
「では、授業を始める」
教壇に立ち分厚い魔法学の本を開く。
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