すいませんもう少し
さてどうしようか?
今彼は致命的なまでに敗北勇者は追い詰められていた。
これは彼の中では致命的な内容だ。
借金取りが取り立てに来る。
彼はうつぶせになって困っていた。彼の実力であれば借金取りの一人や二人殺すことはたやすいが、彼がこの三年間を生きてくるためにいろいろと融資をしてくれた人間だ、流石に殺すのはやばい。
人としてと言うか、取り合えずやばい。だが懐から抜き出しそうな、この世界最強の武器のひとつはこんな阿呆なことに使われようとしている。
二章 すいませんあと少し
「待ってもらえないでしょうか」
土下座していた。必殺技だがもうすでに百を通り越した土下座に価値なんてあるはずも無い。
「無理」
断頭台に首が据え付けられたような顔をしている。
そこを何とかと何度言ってももうすでに効果は無いだろう。
「ほらこの前の仕事の稼ぎ払ったじゃないか」
「お前は、飴玉ひとつで借金をチャラにしろと」
「世の中には往々にしてそれですむことだってあるんだよ」
「それじゃすまねぇ無いようだろうが。……っち、今日はここで辞めてやる。明日はお前をうっぱらうからな。勇者って事でお前には買い手が多いんだよ、尻の穴でもきれいにしてろ」
ぺっと、新開の頬に唾液を吹っかける。
殺そうという躊躇いを簡単になくなるなかどうにか彼はどうにか理性でそれを落ち着けさせる。
震える手で酒をあおり一息つくと一度うなずく。
「よし、逃げよう」
この世界の勇者の借金返済方の一例である。
もう最悪きわまれることこの上ない。一応これでも殺さないだけましとか思っている勇者も珍しいだろう。
早々に夜逃げの準備をするあたり最低だ。
準備の段階で、すでに店に強盗を行っている。この世界では比較的ましな光景だ。
「男として尻の穴だけは絶対死守せねば」
もうなにがなんだか。
慣れ親しんだごみ処理場に彼は別れを告げ、新たな地へと旅に出た。これで通算三十回目の借金取りからの逃亡だ。
ここまで着てやはり信用できるのは、人の心よりも金だという事を勇者はまた心に刻んでいた。彼は富士山も見納めになるなと呟きながら、一路借金取りから逃げるために自分の故郷に足を向ける。
今のこの世界の現状で、移動手段はあまりそろっていない。日本を縦断するファーストラインと呼ばれる高速力場軌道列車がある。沖縄から北海道まで縦断可能の無人交通ラインであるが、今現状では島根の王国が管理しているおかげで彼はそれに乗ることはない。
今現状で日本を支配している王国の権力は強大である。空の転換期以前でさえ日本はある技術により、世界の中心に立つような国に変わっていた。そこの中心に立つというのは、ある意味世界を支配しているのと大差はない。
この力場兵器と呼ばれる武器は、日本以外に存在しないのだ。日本でさえその数は極めて少ない、賢者と呼ばれる存在が持つ精神解体などにいたってはもっと珍しい部類に入る。
日本で作られた力場兵器は、全部で二十一機。それ以外のオーバーテクノロジーは、現状でも八機、予言装置と、精神解体はここに入る。その内、王国が所有する力場兵器は十九機、そしてもう一つの方はすべて所有している状態だ。
勇者の力場兵器と、その戦闘の際に壊れた魔王の武器。
最も所有したところでこの二つの武器は、彼ら意外に使いこなすことはできない。この二つの武器は特殊すぎるのである。完全力場支配機構、侵食力場機構、これがその最強の武器の名前である。
「王国の経済特区にでも言ってみるかな。あそこには、神官もいることだし。何より僕の発祥の地だ、集落ギルドにでも向かえばいまの僕の状況がわかるだろうしね」
だがもっともそんな最強を関する兵器の一つである事なんて勇者本人は知らない。
あの二つの兵器に限り使用条件がほかのものと極端に違うのである。脳の強制制御解除、それに耐え切れる能力がなければ簡単に死ぬのだが、
「うん、やっぱ乗らないときついな」
そんな様子はまったく見られない。結局今の彼は借金取りから逃げるため彼は、自分の生まれ故郷である経済特区、勢力 薔薇十字 獅子心王が治める旧岡山県、今の名前をアイユーブと言う。
「まぁどうにかなるなる」
挙句自分で否定したファーストラインに堂々と乗って、彼は向かう己の故郷にして、王国結成の地。魔王殺しのパーティーが生まれた場所だ。
「わが故郷待っているといい、敗北勇者改め完全防御新開がこっそり凱旋だ」
苗字と言うのは普通そう簡単に、ぽんぽん帰る事の出来る物では、この世界でもないと言うのになめた理由で彼は、改名を果たす。
だがまぁ、ここが彼の転機となる。下劣の勇者が一人の狼と出会う、それが本当の始まり、屑が塵を歌う芥の世界で勇者は王者と出会う。幸せで幸せすぎてくそったれた世界の始まりだ。
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