現代に現れる異生物達
遊園地エリアに到着した二人は、景色を一望できる観覧車に乗ることにした。高いところから探せば、異変を見つけやすいという単純な理由だったが、実際彼らの戦闘はそれだけ、彼らの目に留まりやすい。
周りが騒ぎ立てることなく、その場だけが騒々しくなるという異様な光景が拝める。それに、観覧車に乗りたいと言い出したのは、にぃなの案だった。特に乗りたい物や順番などに興味のなかったシンは、彼女の気の赴くままに従った。
多くの家族連れやカップルが長い列を作り並んでいたが、キャラクターの姿を投影している彼らには関係のないこと。気持ち人混みを避けながら、二人は乗車口まで一気に進んでいく。
そして、客をゴンドラへ案内する従業員の横を通り、遊びに来ている何処の誰かも分からぬ家族一行が乗るゴンドラの中へと乗り込み、扉が閉まって動き出す。
「ごめんね、ゴンドラを一つ貸し切りにするのは出来なくて・・・」
「まぁ、こんな身だからね。仕方がない。それにこっちの姿も声も聞こえてないし、丁度いいんじゃないか?」
「・・・ちょっと気まずいけどね・・・」
苦笑いをしながら、食い入るように窓の外を見る子供と、それを微笑ましく眺める両親の家族団欒に同行する二人。
ゴンドラ内には、窓の外に見える光景の説明をするアナウンスが流れる。如何やらこの観闇車には、窓から覗けるプレジャーフォレストの景色の他に、窓のガラスに設けられた特殊な装置により、特別なものが外の光景に映し出されるのだという。
ゴンドラが時計の九時の位置にやってくる頃、外の光景に建物や自然、多くの人並みの他に現実では目にすることが出来ないような光景が広がっていた。
窓の外には、現実の世界へやって来たかのような、ファンタジー世界の生き物がリゾート内を飛び回り闊歩しているのだ。
ドラゴンが空を飛び、大きく美しい羽を持つ鳥の群れがゴンドラの側を飛んで行き、地上には恐竜のような生物や獣人が駆け回っている。
勿論、これらの光景は映像技術によって表現されているものであり、シン達にのみ見えている異変によって出現した、WoFのモンスターや生物が見えている訳ではない。
「わぁ〜!凄いよ!お父さん、お母さん!ドラゴンが空を飛んでる!」
「すご〜い!おっきな恐竜もいっぱい!」
「そうだね、こんなにいっぱい」
「来てよかったね」
子供達は目を輝かせて嬉しそうに頷くと、また窓の外を食い入るように眺めている。これは子供達にとって、とても楽しいだろう。まだ景色を楽しむのには若すぎる子供達にとっては、こういった一目でワクワクするようなインパクトの強いものの方が楽しめる。
シン達の手にしているパンフレットには、時間帯によって映し出される映像に変化があると記載されている。如何やら時間だけでなく、季節や月毎に違う光景を日々更新し続けているようで、いつ来ても飽きない作りになっているのだとか。
「これは見応えがあるけど・・・。モンスターやコウの仲間を探すにはちょっと厄介かもしれないな」
「うん。でもまぁ、私達はこの中でWoFのモンスターと、戦いが行われている場所を探せばいいだけでしょ?すぐに気づくって!」
目を輝かせていたのは、何も子供達だけではなかったようだ。子供達の後ろから同じように窓に張り付き、外の光景を眺めるにぃなの姿に、シンも先程まで抱えていた不安や緊張感が和らいだ。
今はこの光景を自分も楽しもうと、シンも窓の外へ目を向ける。そこにはWoFのモンスターとは違った見た目のドラゴンや、恐らく想像で作られたであろう色鮮やかな鳥や昆虫が飛び交っている。
するとその中に、一頭だけ他とは違った見た目をした個性のあるドラゴンが見えたような気がした。そういうものもいるかと最初は見送ったが、よく見るとその背中に何者かが乗っているのだ。
「にぃな、あれ!」
思わず彼女の肩を軽く叩き、そのドラゴンの方を指さすシン。少しドキッとした様子で肩を跳ね上げた彼女は、シンの指さす方へ視線を向ける。
「あ!人が乗ってる!何で!?」
「ありゃぁ如何見ても、俺達と同じ人種だ・・・」
一見しただけでは、その人物が敵であるのか味方であるのか分からない二人は、気づかれぬよう身をかがめ、一度ここの拠点のメンバーであるコウに連絡をとってみることにした。
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