第21話 幼馴染みとデート!?
クリスマス当日の朝。
「母さんの野郎、朝早くから面倒なことやらせやがって」
朝早くに母親からたたき起こされたあげく、倉庫からデカいクリスマスツリーや、ツリーのアクセサリーなどを全部恍一人が掃除したのだ。
不機嫌な気分で、ブツブツ愚痴を言いながら恍は作業をしていると、同じくツリーの手伝いをしていた唯が我慢できずに言葉を放つ。
「もお! せっかくのクリスマスなんだから、ぶつくさ文句言わないでよ!」
「……わかったよ」
さすがに可愛い妹には反抗的な言葉は掛けられないので、我慢した。
「今夜、まき絵お姉ちゃんとデートに行くんでしょ?」
「――なっ! デートじゃないよ! 勘違いするな!」
ほんとは今日一日、可愛い唯とクリスマスを暮らしたいと思っていたが、スマホにまき絵から遊びの誘いがきたので即刻に断ったら、
「で、まき絵お姉ちゃんと、どこにデートに行くの?」
「だからデートじゃない。
「へぇ~」
何やら唯は気色悪い笑みを浮かべて恍を見つめる。
「なんだよ、その目は」
「お兄ちゃん知らないんだ。高の山公園にある巨大な樹木で片思いの人に告白すると必ず恋が実るっていう都市伝説があるんだ」
恍は
正直まき絵にはがっかりした。何故なら同じ物理学を学んでいる者として、そんなオカルト的なことを信じているとは、一緒に物理学を学んで欲しくないと恍は思った。
「そんなくだらないこと考えている暇があったら、少しは大学の点数でも上げろっていうんだ。あのゴリラは」
「お兄ちゃん。今ここに、まき絵お姉ちゃんがいたら死んでいたよ」
ポケットから取り出すと例の人物からだった。
スマホに耳を傾けて通話を始める。
「はい、もしもし。……はい……はい……わかりました。それじゃ失礼します」
「まき絵お姉ちゃん、ではないよね?」
「あいつには敬語は使わん」
通話を切り作業の続きを始めた恍であった。
時刻はもう六時を過ぎていた。
恍は夕食を終えて自宅から出る時、唯が見送りに来た。
「なんだ唯?」
「ちゃんとまき絵お姉ちゃんをエスコートするんだよ」
「デートとかじゃないからべつにいいんだ」
二カニカ
「まあ、どっちでもいいんだけど、私はてっきり今日一日家にいるともって、お兄ちゃんにエロいサンタコスプレ見せてあげたかったな」
〈エロいサンタのコスプレだと!!〉
興奮のあまり勢いよく鼻血が溢れ流れる。
「そうだよ。かなり衣装が露出しているから」
「ブハァ!!」
今度は口から吐血するほどに興奮が収まらない。
「まあ、今夜はまき絵お姉ちゃんとデートだし。見せられなくて残念」
「何言っているんだよ! あんな害虫以下のゴミクズとデートするわけないだろ! 無論、まき絵に今から断りのメールを送る! だから早くサンタの衣装を着てくれ!」
「誰がゲテモノですって?」
発情期のオス犬のようにせがむと、何か背後ですさまじい殺気の混じった声が聞こえてきた。
恐る恐る振り向くとそこにはまき絵が仁王立ちして立っていた。
「おまえ……どうしてここに?」
まき絵の狂気に満ちた表情に、恍はパンツを濡らさんばかりに恐怖を抱く。
「七時になっても来ないから様子を見に来てみれば、唯ちゃんのエロいコスプレ、ってどういう意味なの恍?」
「――お兄ちゃん。楽しんできてね」
「あいつ、まさか俺を騙したな!?」
唯はクスクスと笑いながら二階に戻っていった。
まんまと妹に騙された恍は悔しく
咄嗟に恍は身を固めガードをする。
「時間が勿体ないから早く行こう」
まき絵の事を心配しながら恍は高の山公園に向かった。
目的地に着くと公園の周りには沢山のカップルたちで埋め尽くされていた。
ここ高の山公園は、とても広大な公園で緑豊かで、地元や県外の人達にも愛されているのだ。
今まで口も開けなく、ここまで来たまき絵が急に口を開く。
「あそこの木まで行こう」
まき絵の指さした所は、都市伝説で噂の立派な大樹だ。
仕方なくデカい樹木の所まで行くと、急にまき絵の顔が桜のように鮮やかなに頬に染まる。
「なあ、まき絵。もしかしておまえ、都市伝説のことを信じているんじゃないよな?」
まき絵は思わず目を見開く。
「なんで、あんたが都市伝説のことを知っているの!?」
「やっぱりな。今日の朝、唯が話していたんだよ。この木の前で片思いの人と告白すると恋が実るって」
「なんだ……唯ちゃんが話したんだ」
まき絵は顔を俯せて、今まで見たこともないような表情を見せた。
「なあ、まき絵。俺な」
「――私から言わせて!」
目の奥から力強い思いを感じ取れる。まき絵は今ここで自分の気持ちをぶつける決意をした。
「わたし今まであんたのことが好き」
その一言に、まき絵の今まで恍に対しての思いが全て詰め込まれている。
こんな女性らしいまき絵を見た恍は、男としてはっきりと告げた。
「まき絵。お前の気持ちはとても嬉しいよ」
まき絵は顔を上げて目を輝かせる。
「それじゃあ……」
「ああ。この年伝説はやっぱりガセだった、てことだな」
「え……どういうこと?」
ダイヤモンドのように輝いていたまき絵の瞳が
「俺はお前とは付き合えない」
「あんた妹と付き合いたいって本当に思っているの!? そんなの無理に決まっているでしょ! そんな妄想は早く捨てて現実を見なさいよ!」
「俺は唯とも付き合う気はない!」
「じゃあどうして私と付き合ってくれないの?」
「俺。この国から離れて、しばらくアメリカで暮らすことにしたんだよ」
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