第18話 幼馴染みといじめっ子!
授業が終わりまき絵と一緒に自宅へと帰るが、何だがいつもと様子が違う。
大学に行くまでは母親みたいに口うるさくズバズバ言ってきたが、帰宅途中は一言も喋らないのは、今までで初めてだ。それになにか
さすがに拓人もまき絵の姿を見て苛立ちを始めた。
「もしかして、俺が怒鳴ったことにたいして怒っているのか? だとしたら謝るからさ、機嫌直せよ」
「だから違うって!」
子供が拗ねたみたいに、まき絵はそっぽを向く。
相手にするのも面倒くさい、と思った恍はそのまま、まき絵の後を追うように歩きだす。
気まずそうな雰囲気で帰っている途中、コンビニ付近に差し掛かると聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あれ、そこにいるのは、バカな妹を持つ変質者じゃありませんか。――あれ? ひょっとして! そこの女性は彼女さんですか!?」
まき絵は睨み殺すような視線を
(こんな時に、面倒くさいのに出くわしたな……)
コンビニの前で、妹をいじめてる
「ねえ恍。あのアホ面三人組は誰なの?」
「唯をイジメてる奴らで、あの真ん中にいる女がリーダーの鳳城麻衣だ」
「ふーん。そうなんだ」
するとまき絵は、怒りのオーラを出しながら歩き、鳳城の目の前で立ち止まる。
「初めまして、わたしの名前は
今にも殺す勢いがありそうなまき絵を見た恍は、下半身を濡らさんばかりの恐怖を感じてしまう。
まき絵に睨まれても、微動だにしない麻衣自身もかなりのハートを持っているように見えた。
恐怖のあまりに、恍は咄嗟に電信柱の物陰に潜めながら二人のやり取りを窺うことにした。
「カップルと間違えられたくなかったら、一緒に帰らなければいいじゃないですか。それと一つ忠告しておきますけど、そんなに
「御忠告ありがとう。十代でシワだらけの顔を、メイクで隠すような醜いあなたにならないように、気を付けないといけないからね」
まき絵の怒りを生で見た恍は、ただただ電信柱から顔を出すことしか、できないでいた。
「フン、あそこで隠れてる変質者の兄貴と、そのバカな妹みたいに不運な人生を送ればいいんだわ」
「あんた今何て言った!」
「いいわ。もう一度言ってあげる。あそこの変質者のバカな妹みたいに――」
さすがに堪忍袋の緒がキレたまき絵は、麻衣のお腹目掛けて強烈な拳を繰り出そうとした。そのとき、思いも寄らない光景が二人を包む。
なんと、目の前に恍が飛び出して、麻衣を
あまりの強烈な一撃だったので、そのまま地面に崩れ落ち恍は身もだえる。
「ちょっと恍! 何飛び出して来てるの!?」
急いでまき絵は恍を地面から起こした。
「こっ、こいつとは、俺たち兄妹で勝負をつける。だからまき絵は手を出さなくていい……」
恍は麻衣を
「なっ、何なの。こいつらマジキモい。みんな行こう」
鳳城達三人は、この場から去って行った。
まき絵の肩を借りて何とか恍は立ち上がり、そのままゆっくりと歩き出す。
「ほんと、飛び込んで来なかったら、お腹痛めなくて済んだのに……」
「俺が身代わりになってなかったら、今頃おまえは警察沙汰になっていたかも、しれないんだぞ」
「体張ってまで、わたしに問題を起こさせないようにしたんだ。ありがとう」
まき絵は頬をうっすら赤く染めながら感謝した。
「俺に感謝してるなら、俺のお願い一つだけ聞いてもらおうかな」
まき絵は嬉しそうに微笑んでいた顔が一変し、急に恍を睨みつけ始めた。
「もしかして、いやらしいことさせてくれ、何て言わないよね?」
「おまえの体じゃ興奮しないわ。それと俺は唯以外に嫌らしい行為はしない!」
恍は胸を張って堂々と宣言する。
「あんたって本当に最低な人間だよね。いっそ、このまま警察署に送り届けたら、性犯罪を防いだことで、お巡りさんに表彰されるんじゃないかしら」
呆れた表情にまき絵はなる。もっと、まともな幼馴染みだったら良かったのに、と後悔もしていた
「もし俺が捕まっても刑務所から脱獄して唯を拉致し、人里離れた場所に家を建て、二人で仲良く暮らすんだ」
「拉致してる時点で、仲良く暮らせるわけないでしょう……。だいぶ話がずれたけど、お願いって何?」
「腹減ったから、そこのコンビニでなにか奢ってくれないか?」
まき絵は呆れた表情になり、目の前のコンビニでパンを買って恍に手渡した。
警察が出動するようなトラブルが起きなくて、ホッとした恍は買ってもらったパンをかぶりつきながら帰路についた。
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