第16話 浮かれる妹
十一月を迎え、本格的な寒い時期になってきた。三週間後には唯の通う中学校で実力テストが行われるため、徹夜で勉強を教えていた。
「
「わかった。お兄ちゃん」
唯は、すらすらと問題を解き、答えを導き出していた。
「正解。さすがは俺の自慢の妹だ」
唯は照れ笑いして、
「ここまで学力が上がったのは、お兄ちゃんのおかげだよ。」
実際、
最初は小学生で習う漢字や九九の段などできなかったはずが、今じゃ高校レベルの問題をすらすらとペンが生きているよう記入し解いていく。――だが、勉強が出来るのはいいが、一つだけ気になる問題もある。
それは復習をしないこと。
最近自分は何でもできると天狗になっていることがある。
「唯。今夜はここまでにしよう。明日の学校に影響が出る。それと明日は前にやった過去問の復習をしような」
「わかった。でも明日は復習じゃなくて予習をやるからね」
「ああ、わかった」
時刻はとっくに深夜二時を回っていたこれ以上やるのは根の詰めすぎで体を壊す可能性があるし恍も明日大学に登校しないとダメなのでここで切り上げることにした。
強烈な睡魔に加えてかなりの疲労も乗っかり恍は早く自室に戻り、そのままベッドにダイブして寝息に着いた。
「お兄ちゃん。早く起きて!」
朝、天使のようなハーモニーで深い眠りから目覚めた恍は、気持ちよくベッドから起き上がる。
「唯。俺の為に、お越しに来てくれたのか?」
「うん。昨日夜遅くまで、わたしの為に勉強を教えてくれてたでしょ。だから朝起きられないと思って、起こしに来たの」
朝はいつも目覚めが悪いのに、唯のお陰で今日は
「唯に起こしてもらったのは十年ぶりだな。これから毎日、俺のことをお越しに来てくれよ。」
「わたしのテスト期間が、終わるまでお越しに来て上げる」
「それじゃ、ついでに俺が今書いてる論文が完成するまで俺のベッドで一緒に寝ないか?」
「却下。それと気持ちの悪いこと言わないで」
そのまま唯は窓際に向かい、陽射しを塞いでいるカーテンを開放し、爽やかな陽射しを部屋中に入れた。
妹に起こされ、尚且つカーテンまで開けてくれるなんて、まだ夢の世界にいるのだと認識してしまう。これで『ご飯できたから早く降りてきて』何て言ったら完璧だ。
そのまま唯と一緒に部屋から出てリビングに向かい、母親が作った朝食を食べはじめた。
「唯。もう少しでテストだよね。勉強の方は大丈夫なの?」
母さんは唯を心配そうに見つめていると、
「大丈夫、楽勝だよ。今のわたしは勉強ができるから、どんな問題でも簡単に解けるわよ」
鼻を高くして自信に満ち溢れる唯の姿を見て、恍は内心不安が募る。
食事を早めに終わらせた唯は学校に登校し、それに続いて恍も、まき絵が自宅に来たので一緒に大学に登校した。
「ねえ、最近の唯ちゃん、変わったよね」
「そうだな。確かに胸が大きくなって――」
一瞬気を失い誘うな剛鉄のパンチが恍の腹におもいっきりぶち込まれた。
(まっまき絵のパンチの威力が、小寿恵姐さんに近づいている……)
「それで、唯ちゃんに何かあった?」
(人を殴っておいて平然とした顔しやがって)
「以前より勉強ができるようになったから、今度のテストは楽勝だよ、と浮かれていたな?」
「ふーん、そうなんだ。最近の唯ちゃんなんか浮かれ過ぎなんじゃないかな」
確かにまき絵の言うとおり、ここ最近の唯の態度を見ているとかなり浮かれている事に恍も気に掛けている。
「今日、唯が帰ってきたら、少し説教をしてやろうと思う」
「ねえ。その説教って、まさかいやらしいこと?」
「したいけど我慢する。ちゃんと緊張感を持ち集中してテストに受けろって、言ってやるんだよ。」
「ちゃんと、言う時は、言わないと駄目だよ。じゃないと唯ちゃんの為にならないから」
「そうだな。
強く感情を抱きながら恍は大学に登校したのだ。
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