第15話 謎の老人との出会いと、まき絵の怒り

 謎の老人の孫を一緒に探していたが、店内を探し尽くしていたが一向に見つけることができなかった。

 このままじゃ、らちがあかないので一階のフロアにある迷子センターに頼んでお孫さんを探して貰う事にして近くにあったベンチに腰を下ろし老人の孫来るまで待つことにした。

 

「もしよければ君の名前を教えてもらってもいいかね?」

「はい海老原恍えびはらこうといいます」

「恍くんか。私の名前は藤原元錐ふじわらげんすいという。今時の若い子と違って親切で優しいね」

「ありがとうございます」

 

 ニッコリ笑みを浮かべる藤原に頬を赤くして恍は照れる。

 藤原さんの孫が来るまでベンチで会話をし始めた。

 

「恍くんはおいくつなのかな?」

「はい二十歳です」

「ほうほう。では今は会社員か?」

「学生です。豊坂とよさか大学の二年生で物理学を学んでおります」

「なんと! すごいじゃないか! 大した者だよ」

「そんな事ありませんよ」

 

 目を見開いて関心する藤原に天狗のように鼻を伸ばして自慢げに話す。


「今日は一人で買い物に来たのかい?」

「いいえ。妹とキャラメルのオマケみたいな奴の三人で来ました。今二人はどこかで買い物の途中です」

「ほほほ、恍くんには妹と愉快ゆかいな友人がいるのだね」

「ほんとは妹と二人で買い物したかったんですがね、余計な奴まで着いてくるからほんといい迷惑ですよ」

「恍くんは妹さんのことが好きなんだね」

「はい。大好きです! 自慢の妹です。それと妹の名前はゆいと言って昔から俺にべったり甘えて今日もお兄ちゃんとお出掛けしたいと駄々をこねるはもう大変で、でもね妹は――」

「恍くん。少し落ち着こうか……」

 

 でっちあげた唯の言葉を含めて、あまりの暴走ぶりに藤原は苦笑いをしてしまう。

 妹というフレーズを聞くとついつい暴走機関車化とし歯止めがきかなくなってしまう。


「すっ、すみませんでした。妹の事になるとついつい口が止まらなくなって……」

「君が妹の事をすごく大事にしていることはわかった。恍くんの妹さんはこんな頭のよくて優しいお兄さんを持ったことに幸せだと思うよ、これからも妹さんを大切にね」

「もちろんです」


 それからまもなくして向こうから小学生高学年ぐらいの少年がこちらに向かって走ってくる。


「おじいちゃ~ん」

「おお、竜之介りゅうのすけ


 竜之介は藤原に力強く抱きついてきた。

 その姿を見て恍は昔のことを思い出す。

 唯が幼稚園児の頃よく恍の側から離れず、よく抱きついてきてた。あの頃の思い出がまぶたを閉じると浮かんでくる。


「恍くん。今日はありがとね。君のおかげで竜之介に会えたよ」

「私は何もしてませんよ。竜之介くんが一生懸命、藤原さんを探したおかげですよ」

「また近いうち、君と会うかもしれないな」

「えっ、どういうことですか?」

 

 恍は小首を傾げて疑問に思う。


「なんとなく思っただけだよ」

 

 藤原さんは孫の竜之介と手を繋ぎながら去って行った。

 後に藤原さんと出会ったことによって、恍と唯の運命が大きくわける人生になる事になるのだ。



「ねえ、なに黄昏たそがれてるの?」

「ん、人に親切にするっていうのはいいもんだな」

「そう。っで私たちに言うことあるでしょ?」


 振り返ると眉間に青筋を浮かてイライラモードMAXのまき絵と唯が仁王立ちしていた。

 

「……どうした? そんな怖い顔をして」


 突然まき絵の蹴りが恍の顔面を華麗かれいに入った。


「何するんだよテメェ!」

「何しているのはあんたの方だよ! 荷物置きぱっなしで、どこほっつき歩いているかと思えば老人相手に仲良く会話しちゃって、もし荷物盗まれたらどう責任取るつもり!」

「……スマン。荷物のこと忘れてた」


 藤原の件で、荷物のことをさっぱり忘れていたことに気付いた。危うく荷物は全部盗られなかったが、まき絵と唯の二人にコテンパンに叩きのめされるのであった。

 

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