第10話 運命の期末テスト!!

 期末テスト当日。ゆいは身支度を済ませ学校に登校した。

 目標の五十点を取るために今まで必死に頑張り、小寿恵やまき絵達のおかげで劇的に唯が劇的に学力が上がったのは正直驚いた。

 たかが期末テストなのにこうはそわそわしながら、まき絵と一緒に大学に向かう。


「何であんたが緊張してるのよ。それに期末テストでしょ。高校受験じゃあるまいし」


 呆れた様子でまき絵は言うが、それに対して恍は目頭めがしらを熱くする。

 

「このテストは俺にとっても大事なテストでもあるんだ。絶対、一教科五十点は取ってもらわないと」

「だとしても。今日から二日間期末テストがあるんだよ。そんな調子じゃ、あんたの身体が持たないでしょ」

「大丈夫。身体がイカれたら唯に手厚く介抱してもらうから。」

「テスト期間中の妹に、なに変な気を起こそうとしているのよ!」

 

 おもいっきり恍の頭を叩きつける。叩かれた恍は眉間にしわを寄せて激怒する。


「何するんだよ。だれもテスト期間中は手を出すなんて言っていないだろ! このボケッ!」


 その言葉のすぐにまた、まき絵は恍の頭に先ほどよりも重い鉄の塊のような拳を叩きつけた。


「テスト期間以外も手を出すこと自体おかしいのよ。ほんとにもう、とにかく身体には気をつけなさいよね」

「なあ、まき絵?」

「なによ」

 

 恍は怪訝そうな表情になりながら、まき絵の顔に自分の顔を近づける。慌てふためくまき絵の前髪をかき分けて、恍の額が密着した。

 まき絵は顔を真っ赤にさせ咄嗟に目をつむる。


「うん。熱はないみたいだな。とりあえず今日は大学を休んで自宅でゆっくり身体を休ませろよ」


 口をぽかんと開け、まき絵は猿のような間抜け面の顔になる。


「なにを……」

「なにって熱があるか確かめただけだよ。ひょっとして熱でもあるんじゃないかと思ってな」

(キスするかと思ったのに……)

「何か言ったか?」


〈なんでもないっ!!〉


 耳の鼓膜が破れるような声で恍を置いてまき絵は大学に登校した。



 大学を終えて急いで自宅に帰るとリビングに唯がいた。

 期末テストの期間中はテストが終わると生徒は下校するのでいつも早く自宅に帰れるのだ。


「唯。今回のテストの手ごたえはあったか!?」

「自信があったよ」


 その言葉に恍はがっくりと落胆する。自信がるといった練習問題はことごとく悪い点数ばかりだったので、今回の期末テストも最悪な結果になると心で思っていた。


「明日のテストの教科は『英語』『理科』『社会』だったよな」

「そうだよ」


 親との約束は今回のテスト五十点取る――つまり一教科五十点を取らなければいかないのだ。だが目標とする高校に受験するためには、せめて一教科八十点は取って欲しいと恍は思った。


「明日のテスト対策を今からするか?」

「うん」

 

 明日も期末テストもある為、あまり根を詰めないように勉強をした。



 翌日、唯は最後の期末テストを受けに学校に向う。


 大学の授業中、恍は珍しく授業に集中できておらず、空気のような上の空だったのをまき絵は見るに堪えきれないでいた。

 休み時間になり、まき絵はずっと銅像のようにボーッと座っている恍に話しかける。


「なにぼさっとしているのよ。授業中も集中しないで受けていたよね」

「……そんな事はないぞ」

「そんなことあるわよ。見てるこっちが不愉快になるわよ。従業を受けないならこの世から消えてくれる」

「……そうだな。この世から消えてしまえば楽になるかも」


 普通だったら反抗的な態度を取るはずなのに、今日はいつもと違う。

 まき絵は深いため息を吐く。


「唯ちゃんのことなら心配しなくても大丈夫よ。私や小寿恵こずえお姉ちゃんに教わったんだから、良い点取れるにちがいないわ。……それにあんただって必死に自分の妹の為に勉強を教えてきたじゃない。もっと唯ちゃんのことを信じなさいよ。この変態シスコン野郎」

「そうだな。今は唯を信じよう。ていうか、まさかお前に励まされるなんて思いもしなかった」


 まき絵の励ましで目が覚めた恍はいつも通りに授業を必死に受けた。

 陽が暗くなり大学は終わり、恍は急いで自宅に戻る。

 自宅のリビングで唯は母親と一緒にテレビを見ていた。


「お兄ちゃんお帰り」

「ただいま唯。今日最後の期末テストは自分的にどうっだった?」

「ん~まあまあかな」

「そうか。良い点取れるといいな」

「うん、任せて。まき絵お姉ちゃんや小寿恵お姐さんの期待を裏切らないように努力してきたんだし、小遣いのためだもの」


 恍の名前を口に出してくれなかったことに悔しかったが、勉強嫌いな唯がここまで言っているのだから期待はしたい。

 結果は後日。恍は気になりすぎて今夜は寝付きがとても悪くなっていた。

 

 

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