第7話

そのまま、どこからか彼のものらしき馬が現れる。


「俺の名は、ハインリヒ・ワルポット・バッセンハイム。バッセンハイムと呼べ。」


ハインリヒ・ワルポット・バッセンハイム、確かドイツ騎士団の初代団長がそんな名だったな、仮名なのか?と思いながら頭で彼の名を繰り返していると、バッセンハイムはいきなり私の首と膝裏を腕で掴み、私を持ち上げた。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。


「へっ?ちょ、なんで」


突然の事に驚き、そしてお姫様抱っこされた気恥ずかさを誤魔化すため、足をばたつかせ暴れる。


「ちょ、待て、暴れるな、落とすだろう!頭打ったらどうすんだよ!」


落ちたくなんてないので暴れるのを一先ず止める。


「だって、イキナリお姫様抱っこなんかするからじゃないですか!?」


そう抗議するとバッセンハイムはキレ気味に返す。


「お前一人じゃ馬なんか乗れないだろ?だから乗せてやるだけだ。勘違いすんな。」


「なっ」


そう言われるとそれはそれでムカつく。密かに足を踏んでやった。


「痛っ、てめ、やりやがったな!?」


「はぁ〜、なんのことですか〜」


知らんぷりしてやった。


「こいつ!可愛げの無い奴だな!?」


「へっ、可愛げなんか産まれる前に神様に返品してやったわ!?」


そんなこんなして馬に乗せられると、バッセンハイムは慣れたように馬に飛び乗ると、馬を走らせ始める。


「うわっ、結構揺れる!」


想像していた以上の速さと揺れに戸惑う。


「おい!しっかり俺に掴まってろ!この速さで落馬したら死ぬぞ!」


「ひっ!?し、死ぬ!?」


落ちたら死ぬという恐怖から必死にバッセンハイムの背に掴まる。

やはり相当鍛えているのだろうか、見た目以上に胸板が厚い。生憎年頃に若い男性と触れ合う機会がなかった故に、こんな事でも緊張してしまう。


「どうした?顔が赤いぞ?」


「へっ、いや、違いますって、熱かったんです!熱かっただけです!」


万が一緊張してたなんてバレたら笑い者にされそうだ。必死に否定した。









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歴女が知識で戦う異世界物語 糸井嵜諸常 @minazuki41

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