第4話 決心と覚悟

「今月金使い過ぎた……。やっと給料日だ……。」

みゆきと会ってからめちゃくちゃ店に行きすぎて金がなくなり、念願の給料日が訪れた。

作業を終え、帰り支度していた颯馬。

ふと、携帯の日付に目をやると5月5日というのに気づいた。

(今日みゆきがいる店の周年祭だ。)

今日で5年目を迎えるお店の周年祭と気づいた。

忙しいだろうなと思いながら軽トラに乗ろうとした時にLINEが来た。

(お疲れ様です!今日の周年祭来ますか?)

しっかり営業LINEだった。

【今日は行かない。】

(そうですか……。気が向いたら来てくださいね(*^^*))

行かないと送ったが行くつもりでいた。

家に着くと姉がいた。

「おかえり。」

「ただいま。あれ?おふくろは?」

「早くあがったらしいから、パチ行ってる」

「そっか。風呂行ってくる。」

今日も薬品だらけだ。

風呂から出て髪の毛を乾かそうとしたら姉に怒られた。

「そんな頭してるからや。毛ぇ切れ!」

「うるせぇ!ほっとけ!」

俺は人と目を合わせるのが苦手で髪の毛を伸ばしてる。

元々コミュ障で人の目がすごく気になるから少しでも目を合わせられないように髪の毛を伸ばしている。

髪の毛が乾くといつものようにドラ〇エを始めた。


~4時間後~


(さてと。店に行くか)

ドラ〇エをキリのいいところまで終えて

薄生地のパーカーを羽織って出かけた。

行先はもちろん、みゆきがいるお店「Jewel」

(行かないって送ったけど、入ったらどんな反応するんやろうか……。)

プチドッキリを楽しみにしながら車を走らせた。

店に行く途中で西田を叩き起し、一緒に向かった。

「人が寝てるところ叩き起すなよ……」

「ごめんって笑。俺飲むからどうしても…」

「運転手になれやろ。」

「さすが西田!」

「お前ええ加減せぇよ……」

文句を言う西田を引っ張って店に着いた。

ドアの向こうからカラオケの音がすごい聞こえた。

「えらい賑わってるなぁ……。」

「ええから、はよ入ろ」

ドアを開けると、結構賑わっていた。

「いらっしゃいませぇ……って?あれ?!」

「どうもー」

「行かへんって言ったのに?なんで?!」

「驚いた?」

「コイツ、根性悪いとこあるから気ぃつけや」

「いらんこと言わんでいい!」

みゆきは当然驚いた顔をした。

(オモロっ。)

たまに、こうしてからかって遊んでる。

俺たちは偶然空いてたカウンター席に座った。

みゆきはつきだし(お通し)とお菓子を出してきた。

「何飲む?」

「俺は、車やからウーロン茶で!」

「俺はビール、キ〇ンで。」

「オッケー!」

慣れた手つきでビールとウーロン茶を持ってきた。

(なんか、ビールグラス一個多いぞ?)

「うちもビールもーらおっ♪」

(飲むんかい!って前もその前も飲んでたな……。忘れてた。)

3人で乾杯していつも通り話した。

すると、西田が突然ゲームしよと言い出した。

みゆきがトランプを取ってきて大富豪することになった。

言い出しっぺの西田は見物することになった。

「なんかかける?」

「かけるって、何かけんの?」

「負けたもんは、勝ったもんの言うこと聞くとかは?」

「そんでええよ。」

「文句なし、拒否権なしの本気勝負や!」

何故か、かけを提案してきた。

まぁ、その方が面白いけど。

ただ、2人での大富豪はつまらないから

トランプを半分にしてそれをまた半分にして

手札が分からないようにした。

みゆきは大富豪に自信があったらしいが、俺も負けたくなかった。

西田は隣で俺の手札を見て耳打ちで「手加減してやれ」と言われたが、勝負で手加減もくそもあるか。真剣勝負や。

結果、俺が勝った。

「悔しいぃぃぃぃぃ!もっかい!」

「ない。」

「お前、大人気な……。」

「うっせぇ。勝負ってそんなもん。」

「分かりました!文句なしって言ったけど、金銭以外でお願いしますぅ……。」

「それはせぇへん。ママ!ちょっと…」

近くで見ていたママを呼んで耳打ちした。

一言二言、言い終えるとママからOKをもらった。

「みゆき、明日出勤?」

「21時半に出勤やけど?」

「わかった。18時にこの前集合したとこに来て。迎えに行くし。」

「お、おう…。わかった。」

「お前何するつもりや。」

「後で言う。」


閉店の時間になり、お会計して西田に運転してもらい、帰った。

「お前、明日何するんや。」

「ドライブに誘うだけや。」

「ホンマにそれだけか?」

「そうや。」

家に着き、西田は歩いて帰った。

(勢いで言ったけど、明日言えるんやろうか……。)

少し不安を抱きながら眠りについた。


翌日、仕事を終え急いでシャワーを浴び、髪を乾かし、着替えて車に乗った。

同伴した日と同じ場所で待っていると、みゆきが来た。

バッチリメイクと千鳥柄のワンピースを着ていた。

「お疲れ様です…。」

「おつかれ、どしたん?」

「いや、何されるんやろうかと考えたら不安でぇ…。」

「何もせぇへんわ。とりあえずちょっとドライブに付き合え。しんどくなったら言いや?コンビニかどっかで休憩するし。」

「分かりました……。」

車を走らせてから30分ぐらいで動悸がきたらしく、途中でコンビニによって外の空気を吸わせて、落ち着いたらまた車に乗ってを繰り返し、ようやく目的地である夜景が見える公園に着いた。

車から降り少しぶらつき、本題を切り出した。

「昨日の罰ゲームやけど…」

「金銭以外なら…。」

「それは、無いって。再確認やけど、文句なし、拒否権なしやな?」

「はい、そうです。」

「じゃあ……。俺と付き合え!」

「はぁぁぁぁぁぁぁっ??!!」

「はい、しか言えんよな(にや)」

「それ、めっちゃセコない?!」

「セコない!」

「んーもう!分かりました!!よろしくお願いしますっ!」

余裕あるようにしてるが、心臓が破裂しそうなぐらいバクバクだった。

5年ぶりの告白だし、もう彼女つくらないと思ってたから尚更だ。

みゆきは「ずるい!」「セコい!」「腹黒!」と喚いていたけど、負けたのそっちやん。

「元カノも精神病持ってたけど、みゆきみたいやなかったから、手探り状態やけど徐々に治していこ…。」

一瞬、目を見開いてから「迷惑かけるけど、よろしくお願いします。」と紡いだ。

そして、抱きしめて首筋にキスをした。

スマホの時計を見ると体調変化も入れたら出勤時間になったので店に向かった。

店近くの駐車場に停めてみゆきを見送った。

すごい顔赤くしていったけど、大丈夫か?

店に入ったのを確認して家に帰った。

まだ心臓がバクバクしてる。

(はぁ……。やっと言えた。向き合って治せるように頑張ろ。)

こうして俺は、みゆきと付き合うことになった。

まさか、みゆきにはもう1つ秘密があるとは知らずに……。

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