第3話 心境の変化

(あぁ……。あったまいって……。

昨日飲みすぎた……。)

会社の飲み会の翌日、俺は二日酔いに襲われた。そして、同期の西田の車を悲惨なことをしてしまった。

ピコ〜ン♪

「ん?あ……。西田からだ……。」

げっ。気まずっ……。

(昨日はおつかれー!大丈夫か?)

【おつかれ。昨日はマジでごめん。

車の代償で今度飯奢る】

(それはええって!気にすんな!)

なんて良い奴なんだ。俺は心から感謝した。

西田とLINEしているうちに、一通のLINEが来た。

(誰だ……?)

(おはようございます☀️

来週ご飯行きませんか?)

みゆきって子からのLINEだ。

てか、ちゃっかりしてるなぁ〜。

【おはよう。昨日はありがとう。

来週は木か土なら都合いかな?】

(土曜日行きましょっ!♪)

【わかった。出勤は何時?】

(21:30からなのでそれまでなら、何時でも!)

【了解。じゃあ、8時でいい?】

(了解です!来週の土曜日

楽しみにしてます!)

それから集合場所や軽トラか乗用車か色々と決めてLINEを閉じた。

今日は休みだし、スマホゲームのイベントクエストをやる事にした。

しっかし、女の子と2人でご飯いつぶりだろう……。4年?ぐらいだな。

元カノ以来だな。あー、思い出したくねぇ。

元カノは解離性同一障害(多重人格)だった。

人格を作っては潰してを繰り返し約20人以上の人格がいた。汚い話になるが、夜の営み1日で何回やったか……。

出てくる奴出てくる奴 全員相手するのは さすがにキツかった。

別れて今どうしてるんだか。

ま、彼女つくる気ないし一緒に飲むぐらいの付き合いがちょうどいい。

ぼんやりと考えながらゲームをした。

約束の土曜日

「お疲れ様でーす。」

「おつかれっ!今日デートやろ?ニヤッ」

「ちゃうわ!飯行くだけ。」

定時で終わり西田にからかわれながら駄弁ってた。

「お前が女の子とご飯かぁ……。羨ましいぃ!」

「約束やしな。今日だけやろ。」

「そのまま、発展しt…」

「しねぇ。」

「なーんや、つまんな。」

そんなくだらないやり取りしながらふとスマホを見るとLINEがきてた。

(えぇーと。あ、みゆきって子か)

{お疲れ様です!

今日はよろしくお願いします(*^^*)]17:08

どこまで律儀なんだこの子。

さっさと帰ってシャワー浴びて行くか。

今日は溶接しまくったから真っ黒だ。

軽トラに乗って家路についた。

家に着いてすぐにシャワーを浴び終え、時計を見るとまだ18時過ぎだった。

(昨日の続きやるか)

イベントを進めて時間つぶしをした。

(19時半過ぎか。そろそろ出ないと。)

ゲームを中断して2ヶ月ぶりに乗る乗用車(セレナ)に乗り待ち合わせ場所へ向かった。

運転しながらご飯行く女の子の名前を必死で思い出し、確認した。間違えたら失礼だから。

場所につくと女の子が立っていた。

こっちに気づき手を振りながら近づいてきた。

「お疲れ様です!今日はありがとうございます!」

「おつかれ。さてと、行くか。」

「どこ連れてってくれるん?」

「俺の知り合いの店。」

「へぇー!楽しみ!」

車を走らせてる最中も話しかけられ適当に返した。

目的地に着き、店に入った。

「いらっしゃい!あれ!?久しぶり!」

「久しぶり、田中さん。」

「久しぶりやん!……って、あれ?」

「店長?お久しぶりです!」

「久しぶり!元気にしてた?」

「はい!見ての通り(笑)」

え?知り合い?まさかの?

「知ってんの?田中さんの事」

「知ってるで!」

マジかぁ……。世間狭すぎるだろ。

それから席につき、メニュー見ながら何食べようか迷って、とりあえず好きな物を頼んだ。

「よく、来るのですか?ここ」

「1人で飲みたい時だけな。」

「そうなんやぁ。いつも何飲むのですか?」

「基本ビールやな。普段も飲むん?」

「店以外では、飲まないかな?仕事だけ!飲むんわ!」

意外だ。

「そうなんや。なんで、水商売しよって思ったん?」

「うち、元々人見知り激しくて、治そぉって思って入ってん!」

「そうなん?全然そんなふうに見えんかったけど。」

「だんだん慣れてきたかな?入りたての時は1時間喋れんかったから(笑)」

凄い行動力だな。俺だったら絶対無理だ。

そうこうしてるうちに、頼んだものがきた。

「いただきます!」

「遠慮しないで好きなの食べや。」

「ありがとうございます!」

昨日、金下ろしてきて良かったと内心思いながら俺も肉を食べた。

「はい!ハラミお待たせ!これロースはオマケ!」

「マジで!ありがとう!」

「って、俺の金やん!」

「そこは男やから、なっ!」

「まぁ、ええけど。」

美味しそうに食べるみゆきって子。

女子の割にはめちゃめちゃ食べた。

「飲みもんどうする?」

「最後いいですか?」

「ええよ。好きなん飲み。」

「えぇっと……。レモン酎ハイ1つお願いします!」

「はいよ!」

「どうやった?肉。」

「めっちゃ美味しかった!」

「そう。よかった。」

最後に頼んだレモン酎ハイを飲み会計した。

(げっ。1万ぐらいしてるやん!)

金額に驚きつつも会計して店を出た。

「出勤やろ?行こか。」

「はい!ご馳走様でした!」

ドアを開けたけどみゆきは、なかなか乗ろうとしなかった。

どうしたんやろ?と思った瞬間急にしゃがみ込んで苦しそうにした。

「どした!?大丈夫か?」

背中をさすりながら声をかけた。

みゆきは掠れた声で大丈夫ですと言ったが

まだ、苦しそうだった。

「酎ハイ飲んだから酔った?」

「いえ…。違います……。ちょっと…動悸がきた…だけなので……」

「出勤できんのか?」

「はい……。大丈夫…です…。」

どう見ても、苦しそうだった。

とりあえず車に乗せて落ち着くまで待った。

しばらくすると落ち着いたのか喋れるぐらいまでになった。

「ホンマに大丈夫か?」

「大丈夫です。急にすんません……。」

「いや、かまへんけど……。どしたん?」

聞いていいのか分からなかったが、尋ねてみた。

「実は、うち精神病患ってるんです。」

「精神病?なんの?」

「病院には行ってないんやけど、パニ症(パニック障害)の疑いが…。」

「そっか……。」

「みんなには黙っててください!今、出勤削られると稼ぎが……。」

「いや、言わんよ。大丈夫。」

みゆきは自分がなんでそうなったのかを話した。

彼女は声優になるのが夢で月に1回東京にレッスンしに行ってると。

そこに友達がいて泊めてくれてるらしい。

ある日友達がインフルになり、その人が信用してる男友達の家に非難させたらしいが、そこで襲われ(未遂)それから動悸が起きたり、男性のことが怖くなったり、左手足が強張ったりするようになったと。

それが原因で昼のバイトも削られたらしく稼ぎがないらしい。その男からは慰謝料もらったが奨学金に全額突っ込んだからお金に困ってると。

(マジか……。またかよ……。)

「声優になりたいが、電車乗るだけでもしんどいし、稼ぎがないからギリギリなんです……。」

すると、急に泣き出した。

俺は慌ててティッシュを渡した。

「ごめんなさいね。」

「いや、ええよ。けど、本気でなりたいんやな。声優に。」

「はい…。」

「応援するよ。」

「ありがとうございます……。」

それから店に行き、みゆきと話して閉店時間になり帰った。

(はぁ……。つっかれたぁ……。)

ボーッと天井を眺めた。

「あんな、しんどそうやのに、そこまでしてまで本気で声優になりたいんや。あの子。」

独り言をポツリと呟き寝ようとしたが、何故かみゆきの事が頭から離れなかった。

(なんか気になるなぁ、あの子。なんでやろ……?)

それから中々寝られず朝を迎え仕事に行った。

「おはよう!昨日ご飯どうやったぁ?ニヤッ」

期待に満ちた顔をしながら西田が来た。

「別に、普通やった。」

「なーんや。」

「お前は一体何を期待してるんや。」

「発展。」

「アホか。」

「チェッ。つまんね。」

「つまらんくて、すまんなぁ。」

ラジオ体操を終え作業に取りかかった。

(今日は配管の切除か……。)

配管を決められた長さに切っていった。

(あ、ミスった。ミリぐらいやしえっか。)

失敗したところを誤魔化しながら切っていくと、1回目の休憩時間がきた。

ポケットに入れてたスマホを見るとLINEが入ってた。みゆきからだ。

(昨日はありがとうございました!美味しかったです!また、行きましょっ!)

(相変わらず律儀やなぁ……。)

【こちらこそ、ありがとう。

また行こうな!】

(お辞儀スタンプ)

スマホを閉じると西田がめっちゃニヤけ顔で

LINEを見ていた。

「やっぱり発t…。」

「黙れ。」

定時の17時になり本日の作業は終わった。

家に帰りお風呂に入り、またスマホゲームをした。

(そういや、あの子今日も出勤かなぁ……。)

ふと、気になってみゆきにLINEした。

【おつかれ。今日も出勤?】

(おつかれ様です!今日も仕事です♪)

【そっか(^ ^)無理せんように!】

(ありがとうございます(*^^*))

なんで気になってLINEしたのか自分でも分からなかった。

なんとなぁくで聞いたのかな?

(出勤してるんやったら行こっかな?)

何故かみゆきの事が心配になり店に行こうと着替えた。

22時過ぎに店に着いた。

ドアを開けるとママとマスターとみゆきと

他2人女の子がBOX席の客のとこにいた。

「いらっしゃいませー!あれ?昨日ぶりぃ!」

俺はカウンター席に座ったらママが来た。

「何飲む?」

「ビールある?」

「あるで!アサ〇かキ〇ンどっちがええ?」

「キ〇ンで」

「おっけー!」

チラッとBOX席を見た。楽しそうにお酒を飲んで喋ってた。

ママがビールグラスとキ〇ンを持ってグラスに注いだ。

「ちょい待ってや!」

そう言い残してBOX席に行った。

ママとみゆきが一言二言耳打ちして、みゆきが自分が飲んでたグラスを空にしてご馳走様乾杯してこっちに来た。

「昨日はありがとうな!美味しかった!」

「そう。よかった。」

「今日はどしたん?」

「いや、暇やったし来た。」

「そーなん?来てくれてありがとう!」

笑顔でお礼を言ったのを見て内心ホッとした。

「昨日は急に体調崩してごめんな!」

「いや、気にしてへんからかまへん。今日は大丈夫なん?」

「今日は大丈夫やで!」

「そっか。」

元気そうにしてたのを見て安心した。

それからみゆきと一緒にビールを飲み趣味の話で盛り上がった。

彼女もアニメが好きで好きな声優、ゲームの話と趣味が合った。

気がつくと閉店の時間になった。

「ありがとうね!」

「こちらこそ、ありがとう。」

「また、ご飯連れてってな!」

「わかった。おやすみ。」

「おやすみ!またね!」

手を振って別れた。

夜道を歩いて帰ってると、ふと気づいた。

(なんで、店に行ったんやろ…?)

よくよく考えると何を思って店に行ったんだろうか。

みゆきの体調が気になったから?

考えれば考えるほど自分の行動が分からなくなった。

(もしかして、俺……。)

みゆきの事が好きになったのか……?

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