スタードルフィン🐬の幕間
森緒 源
前編 アザラシの水槽
…あの頃、僕はアキという娘と付き合っていました。
若かったから恋愛関係が楽しくってね。
僕が20代後半、アキは20代前半…5歳離れてた。…顔立ちが幼くて、可愛い娘だった。
逢えばイチャイチャしてましたよ。
週末にはもちろんデートに行ってた。
「アキ、今度の週末は何処に行きたい?…」
「私…大きな水族館に行きたいな…アザラシやイルカがいるところが良い!」
…あれは春頃だったかな?…二人でそんな話をしてね。
それで、その週末の日曜日に、外房のマリンワールドに行ったんです。
アシカとかイルカのショーを見せてくれる水族館。
二人で車でね…三時間くらいかな、片道。
山を越えて行って、…海が見えて来たらアキが嬉しそうにはしゃいで…楽しかったな。
マリンワールドに着いて、チケット買って中に入ったら、アキは魚類より海獣の方が好きでね。
最初に屋外のアザラシの水槽へ行きました。
正面がガラス張りになってて、中をアザラシが何頭か泳いでた。
…しばらく二人でその様子を見てたら、2頭のアザラシが下半身をピタリと密着させながらこちらへ泳いで来たんだよね。
「あれ、何だろう?…交尾してるのかな?」
僕がそう言ったら、アキが
「やだ~、ウフフ…」
そう言って笑った。
…そしたら僕たちの隣で、6~7才くらいの男の子とその両親といった三人家族が同じようにアザラシを見ていたんだね。
両親ともまだ30歳そこそこって感じの若い夫婦だった。
そしたら突然、男の子が左を向いて
「お母さん、コービって何?」
と訊いたんだよね。
「えっ !? ……」
お母さんはそう言ってそのまま答えられずに固まった。
そしたら男の子は右を向いて、
「お父さん、コービって何?」
お父さんに同じ質問をした。
「えっ !? ……」
お父さんもそう言って咄嗟に答えることが出来ず固まっちゃったの。
…僕は何だか可笑しくなっちゃってね。
男の子はお母さんとお父さんの顔を交互に見上げて「???」ハテナを飛ばしてる。
ところが、両親の顔をチラッと見たら…二人とも僕の方を睨んでるじゃないかっ !!
えっ !? 僕は悪者…?
そしたら何だか僕の身体も足元から固まり始めたんだよね。
何だこれは?…交尾の呪いかっ !!
…いや、ヤバいぞ!この状況っ。
と感じて来た時、
「あっ!源ちゃん、もうイルカのショーが始まるよ、行こっ !! 」
と言って、アキが僕の手を引っ張ってその場を脱出したんだ。
(ナイス、アキッ !! )
そう心で叫んでイルカショープールへ向かいつつ、チラッと振り返ったら、あの親子は…まだ固まったままだったよ。両親の視線もまだ僕を向いていた。
これってやっぱり僕が悪いの? えぇっ !? …
次回、後編… イルカのショー に続く
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