三月二十一日 祭曜
八方手を尽くしたが、ついに杜郷さんの娘さんの消息がわからないまま葬儀が終わった。
最後に和解してほしい、という想いは叶わなかった。
遺産の分与などの事務処理は、喪主を務めてくれた杜郷さんの従兄弟にそのまま託すことにした。
初めて会ったときは喧嘩腰だった人だが、最後に
「今までお世話になったお礼をしたい」
と言われたので「どうか庭園の薔薇を残してほしい」と伝えた。
いつか薔薇が満開になった杜郷邸を訪れてみたかったのだ。
杜郷さんの従兄弟は「わかりました」とだけ言って、深々とお辞儀した。
その日のうちに、私は杜郷邸を後にした。
二カ月も同じ場所で過ごすと、ずいぶん荷物が増えてしまうものだ。
もう一度、ここに来たときと同じくらいになるまで荷物を減らした。
だけど「どこかに行きたい」という気持ちは戻らなかった。
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