一月十九日 祭曜

庭園の真ん中の薔薇棚で杜郷さんが一人たたずんでいたので、ショールを持っていってあげたら、びっくりするぐらい感謝された。杜郷さんのこういう反応はよくわからない。


その後、杜郷さんは枝しかない薔薇の苗を見ながら一つ一つどんな薔薇が咲くのか説明してくれた。




苺の香りがする品種や、夕焼け空のような花びらの品種、夜になると星のように発光する品種、などがあるそうだ。


どれも簡単に別の品種と交雑してしまうそうで、その品種の特徴を保つには熟練した庭師に世話を頼まなければいけないらしい。その話をするときの杜郷さんはかなり厳しい口調で、この薔薇庭園を維持するのがいかに難しいか、その苦労がうかがえた。


私は初め「こんな話をしだしたのは私に育て方を説明したいからではないか」と身構えていたが、これはちょっとお手伝いとして入ってきたぐらいの人間にはとてもできそうにない。




杜郷さんにどの薔薇が一番好きか聞いてみると、ずいぶん長い間悩んだ後に、裏庭にある苗だと教えてくれた。


どんな薔薇かは春になるまでお楽しみ、ということだそうだ。


春まで私がここにいられるかは疑わしいものだが、見てみたいものだ。

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