十一月二十五日 網布施

ようやく登山口まで辿り着いた。しかし、すでに今年度中の営業は終了したということで、輸送リフトはすべて停止していた。


途方に暮れていると、狩羅と真府という男がやってきて、金次第ではモービルで行きたいところまで連れていくと言ってきた。金次第、というから結構な金額を要求されるのだろう、と思っていたが、手ごろな価格だったので頼むことにした。


入山を気づかれないよう、出発は夜ということになり、二人とは一度別れた。




集合時間までに冬山の装備を整えた。


以前、店で「これぐらいの金額」と確認していたのは一番上の上着の価格で、実際はそのなかに重ね着をしなければならず、こちらのほうがずっと高かった。


まったくの誤算だった。




モービルに乗った。


「燃料代」と称してさらに多額の金を要求された。


「そんな金はない」というと「では、片道だけだ」と言われた。


最悪だ。しかし、もう他に選択肢もない。

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