十一月二十四日 石桐谷
石桐谷まで行くと、ようやくバスの行き先表示の種類が増えてきた。
目的地に近い町まで直通の高速バスも。
バス乗り場から石桐山が見えた。
石桐山は白磐山から採石によって分かれた人工の山だ。今は採石されずに残った巨大な石柱が観光地になっている。
真四角の石の外に、これも石を削って作られた階段が三〇〇〇段あり、頂上へ行けるようになっている。今も、蟻のように小さい人影が巨大な石壁を少しずつ上へ、上へと上っていくのが見える。
なんとも非現実的な光景だ。いつもならもう少し喜んで見ていたかもしれないが、今は買い取ることができないほど巨大な芸術品など見てもかえって憂鬱になるだけだった。
予定より遅れている旅程をどう取り返せばいいだろう。
白磐山のさらに後方にそびえる轟山脈にはもう雪がかぶり始めている。
閉山に間に合わなければ、いったい何箇月の足止めになるだろう。想像もしたくないことだ。
今の格好ではさすがに肌寒くなってきたので新しく外套を買った。これで登山はできないだろうが仕方がない。目的地に近づいたら、改めて装備を整えなければいけないだろう。軍資金が尽きなければいいのだけど。
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