ビニール袋写真集

 大島タイゲン(著)

 ミュンヒハウゼンアート・ブックス


 私たちの生活は、ビニール袋に包まれています。

 ゴミ袋、商品の包装用袋、立ち読み防止シート……エコロジーが声高に叫ばれるようになった現在でもなお、これらは社会のいたるところに溢れ、にもかかわらず人々に顧みられることは少ない存在です。


 本書は、こうしたビニール袋を対象にした写真集です。

 とはいっても、商品を単純に撮影しているのではなく、顕微鏡による拡大写真をとりまとめたものです。

 一口にビニール・ポリ袋といっても、主に素材がポリエチレンで構成されている品を総称しているだけで、表面に施す塗料や裁断の工程は異なります。

 そのため肉眼では同じ色、形に見える袋でも、拡大すると、現れる光景は全く違うものです。原材料の比率、製造元……そういった諸要素もあいまって、数十倍以上に拡大したとき見ることのできる凹凸の組み合わせは、まさに千差万別です。(気になった方は、WEBで「ビニール袋 顕微鏡」のキーワードで拡大してみましょう。宝石のような色形の連なりが現れます)


 著者は「ビニール袋拡大写真の専門家」を名乗るアーティスト。元々は繊維企業でキャンペーンガールのグラビア撮影を手がけていたそうです。関連企業のポリ袋製造工場を見学した際、表面の拡大写真を目にする機会があり、その美しさに魅せられたとのこと。


「かって美と認められたものは美であり続ける一方で、これまで美と見なされていなかったものも美と認められている。文明の進歩とは、隠されていた美を発見する過程そのものである」

 美学評論家アーニー・バークの言葉です。これまで単なる消耗品とされてきたビニール袋をアート化して紹介している著者は、まさに進歩の体現者と呼べるでしょう。




(このレビューは妄想に基づくものです)

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