黄金の心臓
カーテナー・ロイス(著)
日比谷利治(訳)
ミュンヒハウゼン文庫
1987年六月一日、ドイツ・バイエルン在住の解剖学者・カーテナー・ロイスは自分が「神」になったことを突如として悟った。
意味がわからない?しかし、ロイスの脳内では筋の通った出来事だった。「神」とは全知全能の存在である。つまりある人間が前触れもなく「神」に変化した場合、そのことを瞬時に認識できるのは当然の成り行きなのだ。そして「神」でいられる期間がどの程度なのかも同様に理解していた、と後年、ロイスは語っている。彼が「神」でいられた期間は、このときから二ヶ月間だったらしい。
ロイスは著名な解剖学者でもあり、自身の職分に誇りを持っていた。ならば「神」になった彼が優先してすべき事柄はただ一つ。
自身が「神」である間に、自分の身体を生きたまま解剖して「神」の身体構造を明らかにすることだ。「神」ならば、自分自身をメスで切り裂いても死ぬことはないのだから!
本書はこのような状況下で記された、「神の肉体」の解剖記録である。
本書に記されたところによると、
・神の心臓は黄金色に光り輝いている。脈動のスピードは人間と変わらない。
・小腸の襞には美しいカブトムシが数匹生息しており、腸内容物を宝石に変換している。
・神の脳髄は立方体・円錐・直方体を組み合わせた形状の水晶で構成されている。
・神の筋肉は部位によって材質が異なる。アキレス腱は絹、大臀筋はナイロン、僧帽筋は煮えたぎるマグマで造られている。
・神の眼球は北欧のオーロラの中で最も美しい光を放つものを巻き取り一箇所にまとめ、球体に変換させたものである。
…このように、眩暈のするような記述が延々と続く。総ページ数960。
なおロイスは「神」で無くなった後も解剖学者として大過なく職務を果し、後世に影響を与えた名著を数点、残している。
(このレビューは全て妄想に基づいたものです)
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